ひさしぶりに感動する本に出会えた。中川李枝子さんの「本・子ども・絵本」。
きっかけは一時帰国中に地元の子育て冊子で、図書館員さんおすすめ本の一冊として紹介されていたこと。(もう1冊は脇明子さん「読む力は生きる力」、もう1冊は忘れた)「ぐりとぐら」の著者であることは知っていたが、それ以上の知識もないまま、エッセイ集なのでそれほど期待せずに気軽に読んだ。
タイトルの「本・子ども・絵本」は中川さんご自身がこれまでの人生で大切にしてきた3つ。この3つへの愛が文章から溢れ出ていたこと、しかも知識だけでなく行動と経験も伴っている深い愛であることに心を打たれた。
絵本作家になる前は、世田谷区の無認可保育園「みどり保育園」で17年間働いていたという。園長先生一家と同じ屋根の下に住み、保育士と作家業を両立。保育士になったのも、幼少期に読んでいた児童文学のおかげで子どもが大好きだったから。保育士時代に、子どもたちと「本の時間」を通じて絵本や物語、詩を読んで関係性を育んでいた。
みどり保育園での絵本を通じた子どもたちとの関わり合いとエピソードの描写がとても愛に溢れていてかつ情景が目に浮かぶほどで、保育園に通わせている親としてさらに親近感と現実感を持って読むことができた。子どもだけでなく母親にも優しいまなざしを向けられており、育児書よりも何十倍も具体的で心に刺さった。
中川さんが保育士時代の経験をもとにベストセラー絵本「いやいやえん」を上梓したことから、優れた創作は自身の体験・経験を通じた中から出てくることもわかった。
また本書からは物語の力も学ぶことができた。物語は子どもの感性を育む。優れた絵本はただの絵の本ではなく、物語を伝えるものであること。良い物語は子どもを惹きつけ、時代を超えて語り継がれること。
実践したいこと
子どもに読む"ほんものの本・絵本"をじぶんの手で選びたい、と強く願った。わが家には絵本が数十冊あるが、もらいものやおさがりが中心で自分で買ったものは10冊以下。しかも、その中でも"物語"性のあるものはほとんどないことに、この本を読むまで気づかなかった。
子どもには、想像力を存分に育んでいってほしい。いいものを味わい深く楽しんでほしい。そのためにも、ほんものを選ぶことが親であるじぶんの仕事だとわかった。さいわい、中川さんや石井桃子さんのような児童文学の道のプロがお薦めしている本があるので、その中から選ぶことにしよう。「良い絵本は自分の好きな絵本」と中川さんもおっしゃっていたし、じぶんも楽しめるものでなくちゃ。まずはストーリーのある絵本を選ぶ。
そして、「子どもを観察して大事なこと・必要なことを把握すること」「夫婦仲良く」は継続して実践していきたい。
素敵な文章引用・気づき
子どもたちの「読んで!お話しして!今日はなあに?とっても面白いんでしょ!」と見つめられると天使に囲まれた気分になります。そのせいか今も絵本について考えると、あの子どもたちの期待にみちた真剣な表情とわくわく感がよみがえります。これがつまるところ、絵本の楽しさであり素晴らしさではないでしょうか。
子どもへの愛が溢れている。
絵本だけでなく、愛する子どもたちには、この世にあるいちばん良いものを与えたいと願います。先に生まれた者のせめてもの「してやれること」として、お話、歌、音楽、おもちゃ、遊具、衣服も食べ物も、精いっぱい最良のものをえらぶように心がけてきました。
ぐさっときた。わたしは子どもに最善を尽くせているだろうか?最良のものを選び、与えられてるだろうか?
同じことのくりかえしのような生活でも、子どもにはあくなき探究と好奇心によって毎日が新鮮で面白くてたまりません。想像力と創造力で、子どもの生活は活気に満ちています。
くりかえしと思ってしまうのは大人の目から見た世界で、子どもは毎日が新鮮で面白さに溢れているんだよな。育児しているとくりかえし・単調と思ってしまいがちだけど、子どもにとっては貴重な人生の一日で同じとはとらえていないんだよなと気付かされた言葉。
私は子どもが寝る前に必ず読んでやることにしました。子供が寝支度を済ませると、母子仲良く絵本を見るのですが、それは私が心おだやかにむすこと相対する、一日にたった一度の平和なひとときでした。それはまた、子どもが絵本に示す喜ぶや感動、不安、恐れ、などの表情から、それまで見落としていた、子どもの新しい面とか成長ぶりに気づく大事なチャンスでもありました。
これも素敵。きちんと子どもと向き合い、観察している。
読書の入り口である絵本はまた、人生の入口のような気がします。なぜなら、生きることは素晴らしいと、子どもひとりひとりにしっかりおぼえこませるチャンスだからです。私は保育園で子どもたちと絵本を読みながら、楽しいゆたかな心の体験をした子は、人生に希望と自信を持つと信じていました。
ゆたかな心の体験、人生への希望と自信、という見えない部分を心から信じている中川さんの感性と心の美しさにグッときた。"生きることが素晴らしいと、子どもに伝えたい"はかの宮崎駿氏も創作の原点にあげている。つくり手の思いが作品に反映されている。
その子にとって、今いちばん大切なこと、必要なことは何か、がわかるのは、お母さんです。他人を当てにしないで、自分の頭と心で子どもに向かい合い、余計な騒音に引きずりこまれないでほしい。
肝に銘じる。
「幸せな子に育てたかったら、夫婦仲良く」の一言に尽きる。我が子の幸せを願うなら、明るく楽しくあたたかい家庭をつくることです。
「明るく楽しくあたたかい」家庭をつくっていきたい。夫とも「子どもが一日楽しく過ごせたかどうか、にフォーカスして毎日過ごそう」といつも話している。この積み重ねが家庭づくりに反映されているといいな。