2/26 │ 「グッドバイ」

·
公開:2025/3/1

サカナクションは、やっぱり異常集団です。


こんにちは、サカナクションのライブに行きました。私、サカナクションに関しては中学3年生の頃、一緒にカラオケに行きまくっていたお友達から勧められたのをきっかけに多少聞いていた程度の知識しかない身でございます。あと多分彼はサカナクションの所謂"良くないオタク"感満載の曲をたくさん教えてくれていた気がします。

中3以降あまり彼とも話す機会がなくなり、自然とサカナクションの曲を聴く機会もなくなっていたんですが、たまたま高校の仲良し友達から「サカナクションのライブに行きませんか!?」とのお誘いを受けて、今回ライブに行くことになった次第です。彼はライブにほぼ行ったことのない人間で、サカナクションに関してもかなり有名どころとか、明るい部分をよく聞いている印象でした。実際ライブが終わった後、「序盤10曲くらいはちょっとわかんなかった」と言っていたものの、「後半全部やってくれたしとにかく楽しかった!!!!!!」と、総括してライブの感想としてかなり聞けて嬉しいことを言ってくれやがりました。よかった。


なんでしょうか。今回のライブ、僕としてはかなりかなり面白かったと同時に、「サカナクションってやっぱりこうなんですね~~!」って言う納得と、「サカナクションってここまでなのかよ」という恐怖とかもありました。ちょっと感じたこととかを整理しておきたいので書いてみますね。

まず、会場は高崎芸術劇場の大劇場。座席ありでキャパ2000、ライブハウスとかアリーナとかとも違う、ホールって感じの会場です。普段はクラシックとか演劇のステージとかもやっている場所らしいです。それだけあってか音の響きはかなり良く、かつ今回はS席を当てられてこともあってステージとの距離も近く、ステージがはっきり見えていてとても良きでした。このサイズ感、かつ座席ありの会場が初だったのでどんなもんだいと思ってたけど素敵でした。

ここからは開演後の話になります。記憶で書いているので間違っている部分が多いかも。雰囲気で読んで。↓セトリです。

開演に向けて会場が暗くなりステージの明かりがついて、ライブ前半(enoughより前なのは確定)の間、ステージ上部は何かに覆われて暗いままでした。これカーテンが上がりきってないのか? とか思っていたら、曲間でそこにどでかくライブツアータイトル"怪獣"の文字が。ばーんと。これどでかいモニターか! と驚きました。このモニターがやばい。セトリを見て頂いたらわかると思うんですが、怪獣あたりまで、かなり暗めというかダークというかグロテスクというかネガティブというか、サカナクションにわかの僕でもわかるサカナクションの"そういう部分"が詰まったセトリになってました。これが先の「序盤10曲くらいはちょっとわかんなかった」地帯ですね。この間モニター上には、「謎のぼろぼろで草臥れた若い男性がビルの屋上や部屋の中で自身から出る煙やもう一人の自分などに対してひどく怯えたり、不気味ににやついたり、コンテンポラリーな動きを繰り返したりというやけに不気味な映像」か、曲に合わせた映像(これもセトリに合わせているため暗め)、そして山口一郎の血気迫った表情、これらのどれかまたはこれらを組み合わせた映像が流れていました。この「謎の若い男が...」の映像には恐らくストーリーがあり、前半のクライマックスとなる「怪獣」までずっとその狂気を、ボルテージを上昇させながら振りまき続けます。また、山口一郎の表情は闘病・休止期間を経ているということを鑑みるとなお不安に感じるほど、壊れてしまいそうなほどに張り詰めていて、かつ「怪獣」終わりあたりまでノーMC。もう恐ろしくてたまらなかったです。本当に怖かった。全力の狂気を浴びせ続けられていた。

僕個人としては、中3当時にはかなり好きだったもののすっかり存在を忘れていた「enough」を生で聞いて驚愕しました。前曲の「ワンダーランド」と比にならないほど静かに、スポットライトに照らされた山口一郎の独白のような歌とキーボードの音がホールに響いて、こんなに目が離せない空間があるだろうかと震えていました。あの曲のサビと言っていいのかわからないけど、こう、魂の鳴き声みたいに「ウーアー」と繰り返す部分。総じて網膜と鼓膜を直接焼かれているのかと思いました。かっこよすぎる。怖かった。

あと、最近話題の「怪獣」を生で聞けたのはすごかったですね。このライブ通してサカナクションさんはかなり"新しいサカナクション"を強調していたんですが、言うなれば"これまでのサカナクション"の曲の中に含まれるとそれがよりわかるというか。異質な石の塊みたいな曲だと感じたんですが、未知のものをあの場にいた全員で共有できていたという事実がなかなか面白いなと思いました。何言ってるだ?


「怪獣」以降のセトリ、もう見たらわかりますよね。ブチ上げ。大暴れ。急にみんなでかい声出して、山口一郎もでかい声出して、でかく動いて、山口一郎もでかく動いて。「モス」、声を出せるタイミングが多すぎて最高。「夜の踊り子」、ライブで実際に踊り子さんが出てくるということを知らなかったのでビビりました。二人の踊り子さんがステージ前方で踊ってるんですが、その踊りというのも曲に対して緩慢な、しなやかな動きで、こんなバンドサウンドとの融合が成立してるのすげーーー!!!!! と素で感動していました。サカナクションは2歩未来にいる。「アイデンティティ」の間も踊り子さんはいました。それに関してはなぜ。いや、"どうして"。「アイデンティティ」、楽しいんですよね~~。声出せるところ、(おそらく)コンガの演奏が見られるところ、手を振れるところ。原始的な喜びに満ちている。「多分、風。」、山口一郎がこっそりとコートを羽織るんですが、それがかっこいい!! 金色の照明、スモーク。すごいスピードです。高速で走り抜けていく。「ルーキー」、サカナクションの曲の中でも屈指のイントロのかっこよさだと思っています。あのシンセの音が鳴って、あのコーラスのフレーズが聞こえて始まる。見えない夜の月の代わりに引っ張ってきた青い君。ノスタルジーです。「新宝島」!! もう何も言うことはありません。何を言えと。


「グッドバイ」の話をしてもいいでしょうか。僕が中3の時のサカナクションオタクから勧められて刺さり、いまだにずっと聞いている曲は2曲あり、それが「セントレイ」と「グッドバイ」です。かなり個人的な話なので端折りますが、僕は中3あたりにとてつもないノスタルジーとコンプレックスと、若さの全てを預けています。どちらの曲もこの期間のBGMというか、テーマとして沁みついているんですよね。今回のサカナクションのライブ自体も恐らく無意識のうちに自分の中でその頃と結びつけてしまっていて、だからこそアンコール前のラストの曲としてこの曲が始まったとき、本当に涙が流れました。こらえきれないほど泣いたのって久しぶりだ。俺は弱い人間なんだけど、「グッドバイ」を聞くとかなり許される気がして好きです。自分に許される、というか。

ライブでは、このタイミングでモニターに前半の「不気味な男」のエンディングチックな映像が流れていました。日が昇ってくる海際を歩いている男。ここまで散々自身や自身から出る煙に怯え、怒り、疲れ果てた彼を、日の出の光と海に反射した金色の光が照らしていました。彼の体からはまだ煙が出続けているのに、これまでと違って彼はどこか落ち着いた、安堵のようなほほえみを浮かべて海際を歩き続けます。これは完全に僕の妄想ですが、あの煙は彼の過去だったんじゃないかと感じました。どこに行くにしても、何をするにしても付き纏ってくる自身の過去。怒れば怒るほど、その原因は自分にあったのだという事実を突きつけられ、傷つき、怒り。何か大きなコンプレックスを持ったそれを、今の自分が許すことができた、のか、過去の自分に許されることができた、のか。決して正解はわかりませんが、僕にとってはそういう風に解釈することができる、救いの歌です。多分希望的観測というか、そのほうが僕が救われるからそう思いたいだけだと思うんですけど。そんな感じです。少し恥ずかしくなった。


アンコールはDJセットでの「ミュージック」のアレンジから。「プラトー」も「忘れられないの」もぜひ聞いて、みんなで歌いたいと思ってたからやってくれて感激です。ありがとう。

恥ずかしながら「ナイトフィッシングイズグッド」は知らなかったんですが、「グッドバイ」と同じくらい救いの曲でした。サカナクションの曲、泣きながら、でも笑いながら別れていく、みたいな曲が多い。やっぱりこないだ書いたみたいに、サカナクションの書く"寂しさ"みたいなニュアンスが好きです。そこにかなり音楽の良さも詰まっている。ライブが終わってからもずっと聞いています。

ちょっと文字を書きすぎましたね。ほかの印象としては、特に後半の山口一郎が本当に楽しそうな顔をして歌っていたことがすごく嬉しかったっていうのがあるかもです。決して彼の休止期間について語れるほどの知識も何も持っていないんですが、後半のMCで、「病気の前には戻れない、新しい自分を受け入れるしかない」的なことを言っていたのが印象的でした。これも過去と現在の肯定だし、前に進むっていうのはそういうことなのかもしれない。過去への怒りっていうのは、現在の自分を苦しめることになるんじゃないでしょうか。

MCだと他にも「月と自分の間には何もない、手が長ければ届いてしまうっていうのがすごく面白いと思う」とか、「宇宙誕生から人類誕生まで、その間のこんなに短い瞬間にたまたま同時に生きている我々が、同じ場所で、同じ時間と空間を共有していると思うとゾクゾクする」とか、意訳ですが言っていたのが記憶に残っています。あの人が見ている世界ってすごく広いし面白そうだ。そういうものを僕も共有できたのが、なんとも嬉しい時間でした。珍しく真面目に書きすぎた!

@livorut
オムライスとかご飯とか、カラオケが好きです。歌が上手い。