あらすじは以下の通り。
なぜ人間は遊ぶのか。人は夢、詩、神話とともに、遊びによって超現実の世界を創る。現代フランスの代表的知識人といわれるカイヨワは、遊びの独自の価値を理性の光に照らすことで、より豊かになると考え、非合理も最も合理的に語ってみせる。彼は、遊びのすべてに通じる不変の性質として競争・運・模擬・眩暈を提示し、これを基点に文化の発達を考察した。遊びの純粋な像を描き出した遊戯論の名著。
YouTube チャンネル「桜井政博のゲーム作るには」で桜井さんが話題にされていたので読んだ。
本書は「遊び」を通じて人間社会の進歩を分析しようとする本で、ヨハン・ホイジンガの著作『ホモ・ルーデンス』を継承している。
カイヨワは遊びを以下の要素を持つ活動と定義する。
他者に強制されない自由な活動
明確な空間と時間の範囲内に制限・隔離された活動
展開や結果が確定されていない活動
参加者間の所有権移動を除いて財産や富を作り出さない非生産的活動
一定の約束事に従う活動
日常生活から離れた虚構の活動
そして、遊びを以下の4要素に従って分類する。
Agon(ギリシャ語で「試合、競技」): スポーツのように、ある種の特性(持久力、忍耐力、体力、記憶力など)において同一の機会・条件の下で行われる競争
Alea(ラテン語で「さいころ、賭け」): ギャンブルのように、リスクとリターンを釣り合わせながら、遊戯者の力が及ばない独立で偶然の決定に身を委ねる
Mimicry(英語で「真似、模倣、擬態」): 演劇や仮装のように、人が自分を自分以外の何かであると信じたり、他者に信じ込ませる
Ilinx(ギリシャ語で「うずまき」): サーカスのように、一時的に知覚の安定を破壊しパニックや痙攣を引き起こすことで現実を混乱させる
大抵の遊びは複数の要素を併せ持つ。例えば競馬は騎手にとっては Agon であり、馬券を買う者にとっては Alea であり、観客にとっては Mimicry, Ilinks の要素を持つ。
ホイジンガとカイヨワによる「遊び」の定義はほぼ一致しているのだが、前者は人間が宗教や芸術、スポーツ、戦争や裁判、商工業など文化を創造する機能としての「遊び」に着目したのに対し、後者は「遊び」の要素とその組み合わせが文明の発展や共同体の統合にどのように影響してきたかという社会学的な視点から分析している。
原著は60年以上前の本で古い文体なので読むのが大変だったが、遊びの要素を分解してその組み合わせで社会の発展を分析するという視点が面白かった。