自社利用ソフトウェア開発費を資産計上する(しない)のか問題

llll
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X(Twitter) で定期的に話題になる自社利用ソフトウェア開発費の税制について考えたことを書き残しておく。

会計の話はしない。なぜなら日本のソフトウェアに関する会計基準は米国基準(ASC 730 10-15-4, Sub topic 350-40, 985-20)と同様にソフトウェアの利用目的別に資産計上の要件が分かれていて(米国基準の方が細かいという違いはあるが)会計基準の差異が企業活動に影響をもたらす程とは思えないから。なんかそういう学術的な研究とかあったらすみません。

特にインプレッションが多そうなポストを並べてみた。多くの人が反応していることから、注目を集める話題なのは間違いない。私は米国の法人税制には詳しくないのだが、この2つのポストや同様の意見にはつっこみどころがある。

アメリカのテック企業、例えば Amazon の FY2023 貸借対照表の注記を読むと DTA: Deferred Tax Assets の内訳として Capitalized research and development が $14,800M 計上されている。

DTA が計上されているということは、その分だけ会計上は費用処理して法人税の計算で損金不算入として加算している。つまり、少なくとも Amazon は開発費を全額損金として計上していることはない。他にもソフトウェア開発費の一部を DTA として計上している会社は多い。

米国で何を損金にできて何を資産計上できるか詳しい取り扱いは IRC 174 等に書いてあるが、これによると特定の条件に該当する米国内のソフトウェア開発費は原則的に資産計上して5年で償却することになる。詳しい内容は IRS が出したガイダンスを参照。

https://www.irs.gov/pub/irs-drop/n-23-63.pdf


日本でのソフトウェアの資産計上についてはタックスアンサーの No.5461 が分かりやすい。

実務上は、開発全体を複数の主要な機能とそれ以外に分割し、機能ごとにどのチームやメンバーがどれだけ貢献したかを記録しておいてその割合に応じて主要な部分の開発費(給与・賞与など)を資産計上し残りを損金として計上することが多い。資産計上される資本的支出と損金計上される修繕費の定義については7-8-6の2に書かれている。

資本的支出と修繕費を区別できない場合は7-8-5により開発費の3割を修繕費つまり損金とすることができる。実際にはこの2つを区別して資本的支出を計算している企業が多いだろうから、この通達を使うことは少なさそうではある。

実務上は自社利用のソフトウェアは会計では資産計上せず税務上で最低限を資産計上して DTA を積むのがよくあるケースだと思う。


本当はもうちょっと調べて書きたかったが「このソフトウェア開発費ってどうせ数年単位の期ずれだし瑣末な問題なんだよな」という思いが強くなってきたことでやる気を失い、中途半端な状態になってしまった。しかし、どんなに醜い文章でも出力することに意味があると考えているので公開する。

@llll
経理 → プログラマー