感想: トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー / ガブリエル・セヴィン, (訳) 池田真紀子

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公開:2024/12/21

あらすじは以下の通り。

セイディはMITの学生。ある冬、彼女は幼い頃一緒にマリオで遊んだ仲のサムに再会する。二人はゲームを共同開発し、成功を収め一躍ゲーム界の寵児となる。だが行き違いでゲーム制作でも友情でも次第に溝が深まっていき――。本屋大賞受賞作家による最新長篇

本書が2024年に新しく読んだ唯一の小説だった。普段あまり小説を読まないのだが、ビル・ゲイツによる書評の以下に引用する部分が興味深かったので買って読んでみた。

I couldn’t help but be reminded of my relationship with Paul Allen while I was reading it. Sadie believes that “true collaborators in this life are rare.” I agree, and I was lucky to have one in Paul.

An early chapter describing how Sam and Sadie worked until sunrise in a dingy apartment in Cambridge, Massachusetts, could have just as easily been about Paul and me coming up with the idea for Microsoft. Like Sam and Sadie, we worked together every day for years. Paul’s vision and contributions to the company were absolutely critical to its success, and then he chose to move on. We had a great relationship, but not without some of the complexities that success brings.

(日本語訳) 読んでいる間、ポール・アレンとの関係を思い出さずにはいられなかった。セイディは「人生において真の協力者は稀である」と信じている。私もそう思うし、ポールのような存在がいたことは幸運だった。

サムとセイディがマサチューセッツ州ケンブリッジの薄汚れたアパートで日の出まで働いた様子を描いた序章は、ポールと私がマイクロソフトのアイデアを思いついたときの話でもよかった。サムとセイディのように、私たちは何年も毎日一緒に働いた。ポールのビジョンとマイクロソフトへの貢献はマイクロソフトの成功に欠かせないものだったが、その後、彼は別の道を選んだ。私たちは素晴らしい関係を築いたが、成功がもたらす複雑な問題がないわけではなかった。

11歳の少女セイディは姉の見舞いに訪れた病院で同年代の少年サムに出会う。サムは交通事故で母親を失い、自身も深刻な後遺症を負ったことで心を閉ざし苦しんでいた。セイディは姉から拒絶され母親からも構ってもらえず傷ついていた。孤独な2人は同じ病院の一室で当時世界的なブームを起こしていた「スーパーマリオブラザーズ」を共に遊ぶようになる。

サムはロサンゼルスのコリアンタウンでピザ屋を営む祖父母のもとで育ち、セイディは高級住宅街のビヴァリーヒルズに住んでいた。対照的な家庭環境で育った2人だが、共通の趣味であるゲームを通じて友人となった。

誰かと一緒にゲームをするリスクは決して小さくない。自分を解放し、さらけ出し、傷つく覚悟が必要だ。犬で言えば、寝転がって腹を見せるようなもの──〝傷つけたりしないよね、その気になれば傷つけられるってわかってるけど〟。人の手を口でくわえても咬まない犬と同じだ。信頼と愛がなければ一緒にプレイはできない。

大学生になって再会した2人は、共にゲームを作り始める。2人が開発したゲームは紆余曲折を経て大成功を収めるが、お互いが仕事としての「ゲーム」に求めるもののズレによって徐々にすれ違っていく。

例えばセイディは裕福な家に生まれゲーム開発を自己実現の手段と考えていたが、サムは奨学金の返済に苦労していたこともあり経済的安定を得るための手段と考えていた。セイディは自身の作りたいゲームを、サムは資金の出し手や顧客に支持されるかどうかを優先し、不幸な偶然も重なってお互いに不信感を抱くようになる。

一方で、お互いがお互いの最大の理解者であり続け、人生の重要な節目でセイディがサムを、サムがセイディを救う関係にある。約四半世紀の間、サムとセイディは仕事でもプライベートでも互いが互いを必要としながらも、いわゆる恋人の関係にはなることなく別離と和解を繰り返す。

本書は至る所でゲームを題材にしているが、読むためにゲーマーである必要はない。ゲームは2人の物語を表現するための媒体であり、本書のテーマは互いに自分自身をさらけ出すことで愛と信頼が生まれるということだと思う。そのような相手には滅多に会えないし、もし会うことができたら人生を通じて大事にしていきたいと思える本だった。

@llll
経理 → プログラマー