2025年秋の二次創作短歌オンリー歌会 自作解説

lupi_eggplant
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公開:2025/12/19

タイトルの催し物に参加した自作短歌三首の話をします。作者からの自作へのコメントはこちらこちらにて発表済なのでご参照ください。ここではもっと人目を気にしない、わたしが作ってて面白かったポイントの話をする。

・君もまたひとつの星だ夜の果て立ちすくむ手を振り払っても(三毛縞斑/あんさんぶるスターズ!!)

二句切れ。冒頭二句を強くしたかったのでそういうコメントをいただけてよかった。

作者コメントのとおり、三句目を「夜の底」にするか「夜の果て」にするかで迷い(わたし「仮にも対象がアイドルなのに川端康成は駄目だろ」わたし「セリーヌのほうがもっと駄目では?」)よりイメージが幅広い果てをとった。原作で深夜に地階スペースで起こったエピソードを直接的な題材にしているので底のほうが原作寄りではある、のだが見る人はそんなの知らないしな……というのと、このイベントが起こるまでにだいぶやらかしと不信感が蓄積されており、それがクライマックスに達するシーンなので果てです。

原作を知らずにご覧になったら、不祥事を起こしたアイドルかアスリートの歌に見えるのではないだろうかと思いながら出した。ただ仮に原作を知っている人が見ても当てられることはないんじゃないかとも思っていた。キャラが多いしイベントの一エピソードでしかないし作中主体にここまでフォーカスされていないので。そう作中主体、平たく言うとこの歌は誰目線かというと主人公=プレイヤー目線なんですよね。ただし彼に対してこういう気持ちでいるキャラは他にもいるのでそこは解説には必要ない情報。

それはそうと、わたしを以前からご存じの方にはBMBのルーク・ウィリアムズ→?????の歌に見えるのではないかとも思う。作ってから「BMB二首ない?」になった。

・今きみは扉の前で語り手の語る語りの中の語りへ(ヤン・ポトツキ『サラゴサ手稿』)

なんで「きみ」をひらがなにしたかというと他にできる場所がなかったから。「語」をしつこく繰り返してリズム感を作り、なおかつ見た目にも同じ漢字を並べたかったので「騙り」は一つも入れていない。必要なことは作者コメントに書いたのだが、とにかく誰かが話を始める→その中に出てくる誰かが話を始める→その中に(ryみたいな小説であり、わたしは入れ子構造が大好きなのでそこを表現したかった。どういう話かは読めばわかる。視点人物は歌の作者のわたし、「きみ」は作品の主人公およびこの歌を見ている読者のあなたです。そのほかの意図としては、もう一首と二人称の表記を変えて作者をごまかしたかった。歌会は匿名で公開されてコメントをつけるシステムだったので。

歌の意味としては、作者(わたし)からアルフォンソへの応援歌というよりはまだ見ぬ読者(これを読んでいるサラゴサ手稿未読のあなた)へのプレゼンの気持ちが強いかもしれない。実のところ、アルフォンソはそこまで長い距離を動き回っているわけではない(そこそこ長いが世界各地まではいかない)し、長い長い語りが始まるのは三分の一くらい進んでからなのだが、それまでにも話中話は出てくるし、この小説自体が「ある人物(ポトツキ本人ではない)がサラゴサで見つけた手書き本の第三者によるフランス語訳」という体裁をとっているので冒頭からこれでも全然問題ない。わたしは原作が大好きなのでプレゼンが長い。募集要項にプレゼンしてもいいって書いてあったし……

コメントで大長編タローマンの山口一郎さんとして読まれた方がいらっしゃって手を叩いて喜んでしまった。そう言えばそうだ。


※この先にバディミッションBONDのネタバレがありますので、原作の全てのエピソードをクリアしていない人はご遠慮ください※

・もういない誰かあなたをこの日まで愛し育てた人のまぼろし(ルーク&エドワード・ウィリアムズ、チェズレイ・ニコルズ/バディミッションBOND)

こっちがBMBの歌。大好きな体言止めの歌を出せたので満足。チェズレイ視点。

原作をコンプした人ならわかると思うのだが、原作をコンプすると印象が変わるように作った。作者コメントを含めて歌会でそこらへんのネタバレは一切していない。わたしは「まぼろし」=ファントムと即座に読んでしまうけど知らない人はそんなわけはなく、チェズレイがどういう気持ちでいるのかを好きに解釈していただきたかった。作った時点ではいちばん最初の退行催眠SEを想定していたのでチェズレイがルークに向ける視線は冷めきっている……のだがA18後の歌として見ていただいても問題ない、というかむしろそちらでも見ていただきたく、そうすると誰か=まぼろしとあなた=ルークに向けるまなざしが全く違って見える、そういうところが味です。W親子とチェズレイの、そしてチェズレイとファントムの。

意味的に二句の途中で切れるのだが、分かち書きをしたくなかったのでしていない。読めばどこで意味が分かれるかはわかるので。いつも脳内で音読することを前提に歌を書いている。

こんな感じです。

最初はメイン歌会にファントムと三毛縞斑で出そうかと思っていたのだが、それ並べたらわたしの好みの答え合わせみたいになってしまうのでは? と思い、W親子とチェで三者の関係性短歌にした、というしょうもない裏話がある。でもぱっと見バディミで二首出したみたいに見えません? わたしはうっかりすると見える。

@lupi_eggplant
本とかゲームとか趣味