友人と「仕事を完全に辞めたらやりたいこと」という話をしていた。僕の口から咄嗟に出たのは「本屋」だった。
ご存知のとおり、僕は、日がな一日読書をして過ごしてもいいくらい、本が大好きだ。歳をとっても、本を読み続けたいと思っている。
それと同時に、仕事を辞めたとしても社会とのつながりを確保しなければならないと思っている。人と喋りたいのではない。自分が「おかしくなっていない」という確証が欲しいからである。今の僕は、他人からの肯定がないと、人間の形を保っていられる自信がない。
一軒家の一階。広い一室に本棚をいくつか置く。そこに自分の愛書たちを並べる。適当な場所に、座り心地のよい椅子を何脚か置く。その横にサイドテーブルを添える。
来る方は、僕と気心知れた本好きたち。暇な時にふらっと遊びに来て、好きな椅子に座って持参した本を読む。私の本棚から好きな一冊を取ってもらって読むのもいい。美味しいお茶とお菓子も用意しておこう。休憩がてら、僕と少し本の話をしようじゃないか。
というところまで話して、「自分の本、売れる?」と友人に聞かれた。……いや、無理だな。売るのはちょっと惜しい。貸すならいいかも。そうなると、本屋は本屋でも「貸本屋」か?
定年まであと30年。65歳まで働いたとしたら、あと35年。長いなあ、とただ遠くを見つめる。