「もじ」を抱きしめて眠りたい

品場諸友
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とある三連休の一日目。僕は六本木に来ていた。21_21DesignSightで開催中の『もじ イメージ Graphic』展に行くためだ。ずっと気になっていた。

六本木駅で同行者と合流して、ミュージアムへと向かう。外はあいにくの雨。でも、チケットを求める多くの人が列をなしていた。

「んなこたぁ分かっている」と言われそうだが、僕は本が好きだ。そして、それを構成する文字や装丁、紙、製本が大好きだ。だから、展覧会は夢のような空間だった。広い空間を埋め尽くす、ポスターや本。文字、文字、文字。それぞれの文字にこだわりが溢れている。僕は目をキラキラさせながら、一点一点をじっくり眺める。

「好き」だとは言っても、知識が潤沢な訳ではない。「名作」として展示されているものたちの理屈が分かっている訳でもない。それでも一点一点に込められた、デザイナーたちの孤独の魂が、制作に賭ける不屈の精神が、僕の胸に迫ってくるような気がした。僕はその場で平伏したくなった。

僕は自分のお金で初めて図録を買った。作品たちを抱きしめて眠りたいと思ったからだ。

職場の人間関係での落ち込みから、完全回復したわけじゃない。多分、月曜に会社に行って、また落ち込む。見え透いた嘲りや保身のための仲間はずれに対して。それでも、それでも、誠実に頑張ろうと思った。出来ることはしっかりやっていこうと思った。真面目にやっていれば、誰かがちゃんと見てくれていると信じて。

@m478
北極から流れ着く小瓶