
0 はじめに
トラックボール付きキーボードは、自作キーボードへの入沼として、とても大きな力となっています。さて、そのトラックボールについて、ボールの大きさ(55mm、34mm、25mmなど、最近は14mmも)でも、各々の好みがあるように、ケースについてもあります。トラックボール初心者の私の私見ですが、トラックボールケース(以下、「ケース」)内で、ボールがどのように置かれているか、大きく3つに分かれています。
1 丸みを帯びた場所に、そのままボールが入っている。ボールが飛び出ないような形をしている。
2 1に似た形状の場所に、大体3つの支持球と呼ばれる2mm球が壁面にあり、突起としてボールを支持している。支持球には摩耗しにくい材質のものが選ばれる。
3 1に似た形状の場所または、全く違う形状の場所(ボールが飛び出ないような工夫がある)に、3つのボールベアリングがそれぞれ違う向きで配置されている。3つのボールベアリングに支持されるようにボールが置かれている。ボールはボールベアリングの回転によって回る。
1のものは市販品のトラックボールにおいて、ほぼない。市販品のトラックボールは2または3である。
自作キーボードにおけるケースは、2であることが多い。ただ、支持球は購入者が自ら入れなければ1で使用するものもある。つまり、支持球を入れる形をしているが、個人で支持球を購入して、壁面に挿入する手間を煩わしいと思う人がいる(私もその1人)。参考までに、私が購入した支持球は、これになります。
私が設計したトラックボール付きキーボード、cool942tb、cool642tbにおいて、2のケースを4パターン作りました。支持球の配置をどこにするか、試行錯誤しました。結局、思ったほど、ボールが抵抗なく回っているという実感がありませんでした。直径25mmのボールに対して、丸みを持ったケース内部を直径25.3mmとした丸みを持たせました。これを直径25.5mmや26mmと大きくすると、ボールがケース内部でカタカタとしてしまい、気持ちよく回りません。この辺りの丸みについては、設計者の考えがあると思います。私は今のところ、直径25.3mmにしています。
1 ボールベアリング採用のケースの設計
最初、私は2のケースにボールベアリングを取り付けようとしました。しかし、これが難しいのです。丸みを帯びた場所に、ボールベアリングを配置することができず、途方に暮れていました。
1のようなケースにボールベアリングを配置する考えを放棄すると、作業を先に進むことができました。
つまり、先にボールベアリングを配置してから、それに合わせてデザインするのです。
FUSIONでの形状は、このような感じです。
土台をリング状にしたのは、ボールベアリングの向きを確認するためです。
鼎立というのでしょうか、3点でボールを支持するようにボールベアリングを配置していきます。
最初のモデルでは、ボールベアリング3つをA、B、Cと区分すると、Aに対して中心からBは90度ずらした位置にしました。CはBから135度(これはAからも135度になります)ずらした位置にしました。縦回転、横回転、斜め回転を考えたボールベアリングの配置です。
土台ができたら、次にトラックボールセンサー基板の配置を決めます。これについては、2のようなケースを4種類デザインした関係で、私の中で、寸法がわかるスケッチがあり、それを流用しています。流用した寸法で作ると同じような箱型になります。ちょっと変えたいなという誘惑もありますが、それはトラックボールセンサー基板の改変まで含むフルモデルチェンジになるので、ちょっと無理です。
最後に、3つのボールベアリングに鼎立しているボールが落ちないようにリング状の部品を取り付けます。さらに、リングが安定するよう支柱をつけて完成です。
2 2つ目もデザインしました
1つ目のボールベアリングのケースを作ると、そのスケッチが流用できるので、それを元に、さらにブラッシュアップできます。
今回は、土台となるボールベアリングの位置を120度ずつずらしました。
その上で、トラックボールセンサー基板を収納する箱型を作り、ボールが落ちないようなリングをつけてみました。

(左側:最初のデザイン、右側:次のデザイン)

(奥側:最初のデザイン、手前側:次のデザイン)
次にデザインしたケースでは、底面が大きく出ないようにしてあります。これは、cool942tbのケースとの整合性を考慮したためです。

(最初のデザインしたケース)

(次にデザインしたケース)
3 簡単なまとめ
今回は、ボールをリング状部品で固定する形でしたが、このようなスケルトン(骨組み)よりも覆い被せるような形状もデザインしてみたいと考えています。ただ、そうなると、ボールベアリングを最初に取り付ける際、どこからドライバーを差し込んでネジを回すかや、ボールベアリングを入れるかなど、新しい課題が出てきます。今の段階では、最適解が思いつきません。しばらく、現状のデザインを微調整しながら使ってみて、そのうち、新しいアイデアが出たら、実践してみたいと思います。
今回、私の作ったケースでのstlファイルはここに置きます。
このケースでは、M2ネジ6mmとボールベアリングをそれぞれ3つ使用しています。ベアリングは、次のものを使用しました。
私が購入した時は上記のベアリングは5個入りでした。現在は10個入りになったようです。
(令和7年4月4日追記)ベアリングの固定には、M2 ネジ6mmを使用しています。ベアリングの幅から4〜6mmネジであれば、大丈夫だと思います。(追記終わり)
また、githubにベアリング採用のケースのstepファイルを置きました。keyballなどとの違いは、底面にあるネジ穴の形状です。cool942tb、cool642tbでは、M2スペーサーを使ってボールケースとキーボードボトムケースを固定しています。keyballなどで使用する際、穴径が大きいと思いますので、修正してください。
ここに改変の仕方についての説明動画があります。
今回、私はボールベアリングを使用するケースをデザインしました。私の探し方が悪いのか、インターネット上で、ボールベアリングを使用するケースについての作り方を指南してくれる情報を見つけられませんでした。
私の経験が、誰かのより素晴らしいボールベアリング使用のトラックボールケースのデザインのきっかけになればいいなと思い、稚拙な説明ですが、本記事をまとめました。
記事は、新しいトラックボールケースを付けたcool942tbで書き上げました。