愛車の話をさせてくれ

しお
·

車を買ってもうすぐ1年が経つ。

以前は安くて堅実な社用車のセダンに乗っていた。社用車を自由に使える会社なので車中泊しながらよく遠出していたし、フェリーに乗って北海道を巡ったこともある。

しかし心にはいつかちゃんと自分の車を持ちたい気持ちがずっとあった。出先のトラブルへの心配がつきまとうことはもちろん、やはり自分だけの相棒が欲しかった。そんだけ好き勝手に使っておいてどの口がとか、せっかくタダで使えるのにもったいないとか近しい人には言われていたが、遠出すればするほど気持ちは募る。

世間がコロナ禍に入るころ社用車にガタが来始めて、緊急事態宣言で遠出できないうちに貯金も目標額に到達し、満を持して自分の車を買ったのが2023年2月のことだった。

車選びは数年前から始めた。乗るのは好きだが車自体への興味が薄かったので知らないことだらけ。コンパクトカーと普通車って何が違うの? ハッチバックって何?バンとワゴンって別物?など一般常識がないレベルだった。しかしいざ車を買おうと真剣に調べ始めると周囲の車もよく見るようになる。あの車種よく見かけるなあとか、これは荷室が広そうだから候補にしようとか、いいなと思ったらやっぱり高い車だったとか。webカタログを見て気になった車と、実際路上で目に留まる車が全く違ったりもする。希望条件と諸元をスプレッドシートにまとめながら候補を絞り込んでいった。

車選びの基準は以下の通り。乗るのは好きだが運転が得意なわけではないので、乗りなれた社用車との差が少ないことも重要だった。

  • 積載量が大きい(サブトランクがあればなお良し)

  • 車中泊がしやすい(後部座席をフラットにできて奥行き160cm以上)

  • ハイブリッド(燃費が良いに越したことはない)

  • 4WD(雪道、山道対策)

  • 社用車より車体が大きすぎない(前後左右+10cm以内)

  • 社用車より最小回転半径が大きくならない(5.2m以内)

  • 社用車より走行性能が落ちない(社用車は案外スペックがいい)

  • 社用車と同じ足踏み式パーキングブレーキ(混乱するので一緒がいい)

  • フォグランプがついている(度々必要性を感じていた)

  • 予算に収まる(新しい方がよいが中古車でも可)

  • 見た目が好き(重要)

これを全て満たしたのがHondaのステーションワゴン「シャトル」(SHUTTLE HYBRID X・Honda SENSING 4WD)だ。

リンク名にもある通り直前に新車販売が終了となってしまったが、中古であちこち探した結果、近県の認定中古車店で新車同然のものが見つかり見学を予約した。試乗はできないが、堂々とした佇まいを一目見て「私がこの車に乗るんだ」と確信した。

担当スタッフさんは丁寧に色々教えてくれた。強く売り込もうとする気配が全くない一方で、車の性能については愛情たっぷりに語る様子に好感が持てる。決め打ちで必要書類も全部用意していたので、初めて車を買う人間とは思えない手際で当日に契約し、あっという間に納車日を迎えた。

納車日には雪が心配だったので前日から高速バスで現地入りし、観光したのち宿で過ごして当日を迎えた。二度目となると担当さんもくだけた様子で、新車同然の車でいきなり冬道を走ることにびびる私に「緊張してますね!」「今日は雪少ないし大丈夫ですよ~」「今後長く乗るんだからこれくらい走れなくてどうするんですか!」「家までドライブ楽しんでくださいね」と励ましてくれた。

あと「絶対こっちの方がかっこいいと思ったんで頼まれてもないのに勝手につけちゃいました、お代はいらないんで!」とナンバープレートのフレームをオマケしてくれた。嬉しい。かっこよくしてくれてありがとうございます。

納車祝いの花束をありがたく受け取り、担当さんに別れを告げていざ帰路へ。最初はアクセルとブレーキを迷うほど緊張していたが徐々に慣れた。ハンドルは軽く、加速は軽やか。狙った通りに曲がって止まって気持ちいい。

それでも気持ちがずっと高ぶったままだったので、落ち着くために少し走って道の駅で休憩した。駐車場に佇む車を眺める。ちょっと離れて写真に撮る。ぐるりと一周歩いてみる。かっこいい。すげーかっこいい。これ、自分の車なのか。他の誰でもなく自分の相棒なのか。まるで初めて恋人ができたような気持ちだ。

すっかり日が暮れた頃に無事家にたどり着き、ぐっすり眠って、眠りすぎて翌朝会社に遅刻した。


このような経緯で乗り始めた新しい車。元々の希望条件を満たしているのはもちろんのこと、実際に乗ってみて想定以上に良かったことは以下の通りだ。

  • Honda車のハンドルがめちゃくちゃ軽いこと(担当さんもそう言ってた)

  • 回転半径4.9mは想像以上に小回りが利くこと

  • ACC(設定速度内で自動追従する運転支援機能)が超便利なこと

  • シートヒーターがあると冬場にとても助かること

  • 夏タイヤ、エアコンなし、長距離ならしっかりカタログ燃費で走ること

社用車は機能が手薄だったので、サイドミラーをボタンで操作できる、リアガラスにワイパーがついている、バックモニタを見ながら駐車できる、鍵を鞄に入れっぱなしで乗り降りできるなど、近年では当たり前の機能も全部嬉しい。

一応以下のような不満もある。

  • 自分の体格だとAピラーが邪魔で斜め前が見づらい

  • エアコン操作が物理ボタンではなくタッチパネルなので走行中に押しにくい

  • オートハイビームからロービームへの切り替え精度がいまひとつ

とはいえ慣れたり妥協できたりする範囲だし、逆にそれ以外には何の不満もない。最高だ。自分の車でどこにでも行けるのって、思ってた以上にずっとずっと自由で楽しくて頼もしいことなんだと知った。

車中泊については自分が運転席で寝るのに慣れすぎたことと、フルフラットにした荷室の端に少し傾斜があることから最初は手探りだったが、すぐに定位置も決まり最低限の暑さ寒さ対策も揃えてすっかり熟睡できるようになった。車で寝るのが楽しくて、金曜夜から月曜朝まで3泊する週末もある。人間はやはり横向きで寝るのがよい。

しばらくは社用車と2台使いしていたが、会社の方針でそちらは買い取りに出すことになった。初めての道を数えきれないほど一緒に走った車なので別れは寂しいが、まだ走れる余力はあるしきっと次の良い所有者が見つかるだろう。

こうして仕事もプライベートも相棒となったシャトルと、今も嬉しさを噛みしめながら走っている。現在の走行距離は約25,000km。もうすぐ1年、まだ1年。今後とも末永くよろしくお願いします。

@m_shiroh
140文字以上の文章を書く練習をしています。