「地図と測量の科学館」の心地よい空気

しお
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公開:2023/11/21

茨城県つくば市にある「地図と測量の科学館」に行ってきた。

地図と測量の科学館」は国土地理院に併設された科学博物館で、つくばエクスプレス「研究学園」駅から北へ約3kmの場所にある。

国のパワーで入館料は無料、撮影もOKなのが嬉しい。まだ人が少ない時間帯でスタッフのお姉さんが順路・3D眼鏡の使い方・タッちず(色々な電子地図を重ねて見られるタッチスクリーン)の操作を丁寧に教えてくれた。

「伊能忠敬一行が測量しながら歩いた道と、誰の家に泊まったのかが分かるんですよ」

伊能忠敬一行が誰の家に泊まったのかが分かると嬉しい人間として扱ってもらえる心地良さがここにはある。

実家と今の家をそれぞれ調べたところどちらもすぐそばの道を通っており、一気に心が江戸時代へ飛んだ。海沿いを歩いて国土の輪郭を詳らかにした印象が強かったが、内陸部も相当つぶさに歩いていたことを知る。

この調子で書いていくと日が暮れるので、あとはかいつまんでいきます。

↑一等三角点の標石の重さ体験コーナーが「好評につき継続展示中!」の世界。重い。

↑2枚の航空写真を立体視しながら人の手で地図を書き起こしていくための機械。気が遠くなる。どんな経緯を辿ればこの仕事に就けるのだろう。

↑ミュージアムショップの新商品は「金属標型ペーパーウェイト」。標石が埋設できない建物屋上などに設置される真鍮製の標だ。重い。

他にも太平洋プレートの模型を動かして地震を起こしたり、四分儀で高度を観測したり、やたら難しい地理クイズに挑戦しながら日本を巡るゲームで遊んだりした。諏訪湖の東西どちらに諏訪市があるか、岡谷市の産業が製糸業から何に変わったかなんてクイズ、長野県民でもちょっと手が止まるよ。

知らないことがたくさんあるのを痛感したが、同時に「新しく日本最西端になったトゥイシ、写真撮ってて良かった」「納沙布から見た北方領土、ほんとに近く感じたなあ」など自分の体験とリンクする瞬間も多かった。子供の頃に通えたらと思うが、色々な経験をした大人だからこその楽しみもある。

この日の利用者はあまり多くなかったが、地理が好きでたまらない人々が集っていることが感じられた。

  • 月刊誌『測量』の表紙絵を見ながら「あっ伊能忠敬!間宮林蔵!柴崎芳太郎だ!」と喜ぶ少年。前二人はともかく「柴崎芳太郎だ!」は出ない。

    柴崎芳太郎:明治後期~大正時代に活動した陸軍所属の測量手。測量の命令を受けて剱岳への初登頂を果たし、その功績は小説および同名の映画『劔岳 点の記』に描かれている。

  • パソコンにかじりついて都道府県パズルに挑戦し続ける少女。「まだ?」と聞くお母さんに目もくれず「まだ!!!」と言い返し、真剣な表情で日本を創っていた。

  • 日本海山潮陸図の展示を見つけ「見たいって言ってたやつじゃない?」「そう、これこれ!」「この頃には〇〇までかなり正確に分かってたんだねえ」と話しながら熱心に見入っていたご夫婦。興味関心を共有できる関係が素敵。

    日本海山潮陸図:伊能図の130年前に制作された江戸時代初期の日本地図。美術的な美しさもあり見ていると時間が溶ける。国土地理院のwebサイトで高精細画像が見られる。

他にも体験コーナーを律儀に全部体験していくおじさんに倣って私も全部やってみたり、ゼミと思しき教授と学生のグループを見かけて大学時代を懐かしく思い返すなどした。この科学館も、集う人々も好きだな。

4時間ほど滞在してなお見足りないのでまた来たい。次はぜひ、地理好きの友人と一緒に。

@m_shiroh
140文字以上の文章を書く練習をしています。自己紹介代わりの記事リンク集はこちら→ sizu.me/m_shiroh/posts/kk0dbd40xv71