この本1冊をあの時買わなければ今日のご飯が食べられたのに

しお
·
公開:2023/11/28

紙の本を手元に置きたい性分で昔から本を買っては積み上げている。読んだり読まなかったり、面白かったりいまいちだったりした本たちを眺めるのはとても好きなのだけど、同時に時々こう思う。

いつかの将来、飢えてひもじく床に頬を擦りつけながら積み上がった本を見て「この本1冊をあの時買わなければ今日のご飯が食べられたのに」と思う日が来るんじゃないか。

部屋を見渡せば本に限らずたくさんの物が並んでいて、人間ひとりが生きるだけでこんなに物が増えるのかと驚く。総額いったいいくらになるんだ。それだけ稼いできた自分なかなかやるなとも、欲しい物を買える人生万歳とも思うが、引き換えに旅立ったお金の不在がふと怖くなる。

残念ながら私は働くことが得意ではない。現在運よく勤め人の身分を保ってはいるものの、いつどんな事情でこれが終わるかは分からない。貯金ゼロから身ひとつで稼いで立て直してやるぜ!みたいな気概はたとえ貯金ゼロになってもきっと自分からは生まれない。かといって差し迫ってもいないのに身を削るような節約ができるタイプでもない。食べたいものを食べるし、読まなくとも本は買うし、気に入った車に乗りたいし、週末はおでかけするし、好きなアイドルのコンサートには行くし、Lv99を迎えた艦娘には指輪を渡したい。

最低限の備えをしようと投資を初めて2年ほどになる。コロナショック後の上げ相場に乗った形なので幸いどの口座も現状プラスになっており、単純なもので「この本1冊をあの時買わなければ…」という惨めな将来の姿を思い浮かべる回数は減った。大暴落を未経験だからこそのんきに言えることではあるが、精神的な安定は大きな恩恵だ。

一方で将来の資産シミュレーションを見るにつけ、人生なんてあっという間だなという気持ちになり、落ち込む。面倒なやつだ。

あっという間の人生を楽しむにも、案外あっという間じゃなかった人生を生きていくにもお金はあるに越したことはない。将来のことも投資のリスクについても適切に怖がりつつ、できる範囲で地道に備えを続けようと思う。

@m_shiroh
140文字以上の文章を書く練習をしています。自己紹介代わりの記事リンク集はこちら→ sizu.me/m_shiroh/posts/kk0dbd40xv71