エイプリルフールに同性婚ネタをどうせやるんなら

しお
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有名人がエイプリルフールに「私と〇〇(仲の良い同性)は結婚しました!」という同性婚ネタをやって批判を浴びる、という炎上案件がここ何年か続いている。

いろんな人が指摘していることだけど、現実に同性婚をしたくてもできない人が大勢いて実現のために裁判に臨んでいる人たちもいる切実な事柄を「明らかに嘘だと分かるおもしろネタ」として扱うことになにかこう引っかかりとか感じないのか……? と思いながら今年もその様子を見ている。

とはいえ結婚という言葉で仲良しアピールしてファンを喜ばせたいだけで「嘘に決まってんじゃん!同性と結婚なんかするわけないでしょ笑」という感じの悪意は基本ないのだろうし、ファンの側も「えっ嘘だよね? まさかガチじゃないよね?」よりも「ほんとにこの二人が結婚したら素敵だなあ」と受け止めている人が今時は主流だと思うので、批判する人のことも理解した上で、個人的にあまり強く責める気にはなれない。

それにもしかすると本当に当事者だったり、実際に秘密裏に交際していたりして、嘘というテイでこの日だけは本当の発表をして一時の祝福をもらいたいという事情があるのかもしれない……という可能性のことを少しだけ考える。そうやって仮定すること自体なんか空しいし好意的すぎる見方かもしれないけど、もしそうなら気持ちは分かるし100%嘘かどうか第三者からは知りようもないからだ。

むしろ問題なのは、擁護のテイで同性婚支持者を腐したいだけの差別者が多数現れて「ジョークと現実の区別もつなかい馬鹿共がいちいち騒ぐな」とか「どうせ当事者でもなんでもなく批判したいだけの暇人だろ」とか「差別っていう方が差別」とか寄ってたかって言い始めることの方だ。Twitterなりヤフコメなり、ひとたび話題となれば批判派よりもこちらの方が圧倒的大多数になる。

こうした言説に囲まれると、発端の有名人はそのつもりがなくても「同性婚はネタにしていいし差別だと騒ぐ奴らは馬鹿」というムーブメントの神輿として担がれてしまうし、実際そういう過激な擁護ツイートにいいねを押して炎上が長引いた有名人はいて、そこまでいくと本当にただの差別者になってしまう。もし発端のジョークに悪意がなかったのなら自らが神輿となってしまう流れに身を任せないよう十分に気を付けるべきだし、自分の好きなアイドルや作家がこうした騒ぎを起こさないことを毎年願うばかりだ。

今後もきっと「同性と結婚しました!じゃーん嘘です!笑」のネタは続くだろう。しかし単にそれだけだと同性婚をただのおもしろネタだと思っている人に見えるし、印象があまりよろしくない。エイプリルフールに同性婚ネタをどうせやるんなら、「同性と結婚しました!というのは今はまだ嘘なんだけど、いつかこれが本当だと言える国になってほしいと願っています!」とひとこと添えて同性婚に賛成の立場を明確にしてくれたらもっと安心して見ていられるのに、と思う。

けど、それはそれで「ネタならいいけど同性婚とか政治的な話ありえん」勢に目をつけられて炎上するんだろうな。断絶はまだまだ遠く続く。

@m_shiroh
140文字以上の文章を書く練習をしています。