キラキラがいっぱい/アンジュルム川村文乃さん卒業公演

しお
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公開:2024/12/3

2024年11月28日、日本武道館にてアイドルグループ「アンジュルム」のサブリーダー川村文乃さんの卒業コンサートがおこなわれた。仕事を終えてからライブビューイングの会場に滑り込み、ライトパープルのサイリウムを握りしめながら卒業を見届けた。

タイトルは「ANGERME 10th ANNIVERSARY TOUR 2024 AUTUMN『ROOTS』川村文乃 FINAL ☆KIRAKIRA☆」。名前の通り会場はキラキラで満たされていて、何より川村さん自身が笑顔も涙もずっとキラキラしていて、とても幸せなコンサートだった。

音楽ナタリーさんの記事が丁寧だったのでコンサートの詳しい流れはこちらから。


◆ メンバーそれぞれへの雑感

  • 上國料さん:竹内さん、佐々木さん、そして川村さんの卒業を小さく大きな背中に背負って、これからもアンジュルムは私に任せろという気迫が漲っていた。「リーダーとしてじゃなく、いちかみこの言葉として聞いてね」と前置きしてからの「かわむー!大好き!BIGLOVE!」という語彙ゼロの愛が最高。

  • 川村さん:ステージに立つと会場がぱっと華やかになる能力を如何なく発揮して輝いていた。抜群のスタイルから繰り出されるお洒落なダンスと可愛く伸びやかで心地よい歌声は本当に素晴らしい。メンバーとしてはもちろん、パフォーマンス面でもこの人が抜けるのは寂しい。

  • 伊勢さん:パフォーマンスの安定感は随一。涼しい顔でそつなくこなすように見えて、役割期待に応えようとする意識の一際強い人だと思うので、まだ若手ながらNo.2になる責任感と緊張感が滲んでいるのを感じた。応援しています。

  • 鈴ちゃん:大人と子供の境目で、卒業していった先輩たちの分まで自分も成長しなきゃと試行錯誤しているように見えた。目を引く派手髪、力強さが増してきたソロパート、まだぎこちない煽りも愛嬌があって好き。

  • なりんちゃん:少し明るくなった髪色、2着目のはっきりしようぜモチーフの黒衣装が大人っぽく似合ってて良かった。意思の強そうな目と一瞬の魅せ方が上手くていつも目を引く。同じくちょっと独特な間のある煽りが好き。

  • しおんぬ:目もダンスもバキバキに決まっていて卒コンへの気合いを感じた。「じれっ…………たい」が過去一じれったくて会場が湧いた。鬼気迫るものがありながら同時にコミカルさもあって、カメラに映ると嬉しい。

  • わかなちゃん:これまで笑顔で歌い切っていた『交差点』で初めて声が出なくなるほど泣いていて、つられて会場みんなが泣いた。川村さんとの関係性の深さを感じたし、川村さんのイズムを誰より継承してくれることを期待してる。

  • 遊季ちゃん:主役を除けば今回MVP。短くした髪に汗を滴らせ、大幅に増えたソロパートの全てで一人残らず撃ち抜く決意の目をしていた。病気と闘いながらなので無理はしないでほしいけど、間違いなくグループとハロプロの未来を背負っていく人。

  • 幸穂ちゃん:この日のヘアスタイルが大人っぽくて、カメラに抜かれるときの眼光も鋭く、わ、格好いい!と思う瞬間が多かった。ステージ映えするダンスとまだまだ伸びしろのありそうな歌、今後の成長に期待してる。

  • 花ちゃん:いつの間にかすごく大人っぽくなり、元から上手かった歌もさらに大きな武器に成長していて目を惹いた。泣き笑いの声がマイクに乗っちゃうところも可愛くて笑いと涙を誘っていた。すくすく育ってほしい。


◆川村さんについて

川村さんほど全ハロプロメンバーから、全ハロプロファンから、お仕事で関わる全ての人から広く慕われてきたメンバーを寡聞にして知らない。卒業が決まって以降メンバーやファンから寄せられるあたたかな言葉、地元商店街や市場関係者や行政職員からの評判を聞く機会が増え、あらためて川村さんの人徳の高さを感じる日々だった。

川村さんは10歳で高知県おさかなPR大使に任命され、11歳でローカルアイドル「はちきんガールズ」に加入。14歳ごろから東京と高知を夜行バスで往復する生活が始まり、ステージとレッスンの日々に明け暮れた。17歳でハロプロ研修生に加入した。18歳でアンジュルムとしてデビューすると2年目にはサブリーダーに抜擢。自由奔放な先輩と個性豊かな後輩たち、どんなメンバーとも軽やかに誠実に関係を築きながら、ブログやSNSでの丁寧な発信を通じて多方面への信頼を積み重ねていった。

地元との縁も大切にし続け、高知県アンテナショップのアンバサダー、高知県観光特使、高知市PR大使を歴任。22歳となった2021年には女性として初めての「1級マグロ解体師」試験に合格し、「アンジュルム? ああマグロ解体師の子がいるところね!」とグループの知名度向上にも大きく貢献した。ひなフェス併催の里山里海イベントでマグロ解体ショー現場に立ち会えたのは私個人にとっても思い出深い。人だかりであまり見えなかったけれど、川村さんの「よいしょー!」の掛け声と袖からやんややんや見守るアンジュルムメンバーたちのにぎやかなステージが印象に残っている。

この度25歳になった川村さんは、「夢見た15年」を歌い、15年間のアイドル活動に幕を下ろした。

魚とウロコのモチーフを散りばめたマーメイドのような衣装で登場し、メンバーから涙と愛に溢れたメッセージカードを受け取って衣装の一部として身に纏った川村さん。そのアイドル人生は最初から最後までずっと高知とお魚と共にあって、彼女の美しいスタイルや、よく通る可愛い歌声や、誰からも信頼される人徳と併せて、本当に唯一無二だったと思う。

15歳の頃、東京行きの夜行バス乗り場でリンゴをかじりながら「お金持ちになりたい。みんなに楽をさせてあげたい」と、活動を支えてくれた母を思ってTVインタビューに答えた姿は動画に残っており、ファンの間で長く語り継がれている。卒業挨拶で川村さんは「私は上京するときに、みんなに恩返しをするためにお金持ちになりたいと思ってたんですけど、皆さんからいただいた愛や、みんなと笑った日々、流した涙、キラキラしたもの、それらすべてはどれだけお金を積んでも手に入れることができない大切なものでした」と語ってくれた。みんなが知っているあの姿から地続きの未来がここにあって、たくさんのキラキラした宝物と自分の力で出会い、今それを抱きしめながらひとつの物語が閉じるのだと感じさせてくれた。

これ以降、人前に顔を見せる仕事はしないと固く決意して、キラキラしたアイドルとしての自分をファンの記憶に閉じ込めたまま旅立つ姿は、寂しいけれどアイドルの在り方のひとつとしてあまりにも潔く美しい。

最後ステージから去る時、川村さんは「またね」でも「いつかどこかで」でもなく「ばいばい!」と笑顔で手を振り、その姿を覆い隠すスモークと一瞬の火花のきらめきと共に私たちの前から姿を消した。照明がついてスモークが晴れたステージには、もうその姿がどこにもないのを目の当たりにした会場からは、悲鳴とも感嘆ともつかない声が中継越しにも聞こえてきた。

川村さんを応援してきた全ての人にとって、芸能界引退という幕引きはきっと想像できないくらい寂しいことだと思う。けれど同時にきっと、とても幸福で、宝物のような、忘れられないコンサートだった。

@m_shiroh
140文字以上の文章を書く練習をしています。自己紹介代わりの記事リンク集はこちら→ sizu.me/m_shiroh/posts/kk0dbd40xv71