生を実感する瞬間

しお
·

生きていると時々生を実感する瞬間がある。私の場合は寒い冬を越え、花粉症で前後不覚になる春が過ぎ、新緑が深まって春が夏に移り変わる一瞬の季節の爽やかな晴れた日にその瞬間が訪れることがある。

今年のそれは5月10日(金)の朝10時にやってきた。

この日は有休を取っており、大阪でKと合流して夜には神戸でBEYOOOOONDS×オーケストラのコンサートを観ることになっていた。木曜のうちに大きな仕事を片付け、降って沸いた仕事は社長に丸投げし、定時で上がって夕飯を食べ、リングフィットアドベンチャーをしてシャワーを浴びてから夜のうちに車に乗り、岐阜県で寝て朝4時半に起き、愛知を抜けて三重県の山間部を走っていたときのこと。

山間部ながら急に少し開けた場所に出た。周囲は緑鮮やかな木々、そばには人工の溜め池、広く綺麗で車通りの少ない道、ここから始まる長い下り坂、雲一つない空、外気温は17℃、まだ柔らかくあたたかな日差し。何気なく通った道だったが思わずおぉ……となって路肩のスペースに車を停め、窓を全開にした。少しだけひんやりとした心地よい風が車内を自由に通り抜けていく。

あ~~~~~生きてたかも~~~~~!!!!!

あまりに気持ちいいのでそのまましばらく生を満喫した。なんて幸せなんだ。

こういうとき暑くも寒くもないこの最高にちょうどよい気温が永遠に続けばいいのにと思うけれど、そうでない時期があるからこそちょうどよい一瞬が輝くのかもしれない。なおこの日気温計で見た限り、深夜の気温は1℃(長野の山中)、昼の気温は28℃(大阪の街中)だった。交代浴じゃん。

生を実感する瞬間が訪れたからといってその日から何か目覚めるわけではなく、その後はごろごろと週末を過ごし夜中に帰ってきて今こうしてまたむにゃむにゃと翌週が始まった。うだつの上がらない日々は変わらないが、ああいう瞬間の記憶が人生の幸福度を支えてくれているんだろうと思う。

@m_shiroh
140文字以上の文章を書く練習をしています。