「都道府県市区町村」という名前の、20年以上続いている地理系データベース&コミュニティサイトがある。サイトは知らずとも、ここから生まれた「経県値」という概念を見聞きしたことがある人は多いだろう。都道府県ごとに「住んだ 5点」「泊まった 4点」「歩いた 3点」「降り立った 2点」「通過した 1点」で得点をつけ、自分の経験を総合点で測る遊びだ。
私も遠出好きの端くれとして話題を見るたび挑戦しており、今日もTwitterで見かけたので久々にやってみた。

唯一未踏だった岩手県に昨年行ったことで全都道府県に色がついた。車中泊も宿泊にカウントしているのでほぼ赤に染まり、現在188点。あと伸ばせるのは島根県と香川県での宿泊のみで、それ以上は引っ越しが必要だ。
Twitterで他人の経県値マップを見ていると、染まりきっていないカラフルな地図に物語を感じる。
旅行はしないが出張が多いので地方都市が赤(宿泊)で途中は水色(通過)
サッカーチームを追って全国遠征するので本拠地のない場所は真っ白(未踏)
製造業で転勤続きだったので太平洋ベルト沿いに紫(居住)が並んでいる
添えられたコメントで分かることも多いし、勝手に憶測するのも面白い。様々な事情が地図にあらわれていて大いに想像の余地がある。初めての人も久々の人も、ぜひ各自の経県値マップを作ってみてほしい。
あと「逆に15点くらいの人が気になる」と言っている人を見かけ、深く頷きながら学生時代に釧路で会ったおじさんのことを思い出した。
そのとき私は大学の同期たちと道東を巡る自転車旅の途中で、道端で地図を調べているところに声を掛けてきたのがその人だった。話を聞くと釧路生まれ釧路育ち、釧路の大学を出て釧路市に長年勤めている根っからの釧路人。用事で札幌や旭川へ行ったことはあれど北海道から出たことは一度もなく、釧路がどこよりも一番素晴らしいと言っていた。
当時の私は「他の土地を知らないのに何と比較して一番と言えるんだろう」と訝しんだ。しかし、自分にとってこれが一番だと感じるために他の経験は必ずしも必要でないことや、そうした生き方を選ぶという幸福の在り方について、今なら少しわかるような気がする。