手持ち無沙汰な夜にA嬢からDiscordにメッセージが来たので久々に話したくなって通話してみたら、今から人生初のピアス穴を開けるところだった。
A嬢は大学時代を同じ屋根の下で過ごした元同居人の一人だ。お洒落さんだし装飾品にも関心の高い人だけどピアスは使っていなかったのでなぜ今と思ったら、推しの男性アイドルとお揃いにしたいとのこと。元より次元を問わずいろいろなキャラクターや俳優にのめり込んではコスプレをする人だったので一瞬で納得した。
「一人で開けるのもちょっと寂しいな~と思ってたからちょうど良かった」と言いながらてきぱき耳を冷やしてピアッサーの位置を調整するA嬢。見えてもないのにむしろこっちが緊張する……と思いながら雑談しているうち、「おーいけたいけた」といつの間にか2つも穴を開けていた。ひぇっ。「注射するより痛くない。親知らずを抜いて死にかけたことを思えば全然なんてことない」とのこと。うまくやれればそんなものなのか。
それにしても夜更けに他愛もない話をしながら友人がピアス穴を開けるところに立ち会うなんて、まるで大学生みたいだ。三人で暮らした古い平屋の明かりを思い出して気持ちが少し若返る夜だった。