ツーリングマップルの広域地図が好きだった

しお
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Googleマップ見てて思ったけど、この縮尺で表示されるロープウェイの索道、散髪後の服についちゃってる毛みたいでかわいい。

広域地図が好き。もっというと、広域地図に何を記載して何を記載しないのかの取捨選択に地図ごとの特色が表れるのが好きだ。Googleマップのようなオンライン地図も、国土地理院地図の地勢図も、なんなら地球儀も、どの都市名どの道路どの山を残すのか基準を決めた人やひとつひとつ考えた人がいるんだな~~!と楽しくなる。

それと同時に悲しいことを思い出してしまったのでそちらの話をしたい。

自転車旅行をしていた学生の頃、まだスマホが普及しておらず出先で気軽にオンライン地図を見られなかった時代には、手元にいつも昭文社の『ツーリングマップル』があった。観光ガイドに載っていないマイナーな寄り道スポットやバイクでの走りやすさなどライダー目線のコメントがびっしり書かれている、ツーリングに特化した冊子タイプの地図シリーズだ。

私はその巻頭についている折り畳みの広域地図が好きだった。ツーリングマップルは関東甲信越、中部、関西など地方ごとに分かれており、当時の広域地図は表が地方、裏が全国の地図だった。「こんなに広域でもあの場所載ってるんだ!」とか「このスポットが気になるから次はこのルートで走ろう」とか、広域地図でもしっかり見所が記載されているからこそのプランニングの楽しみがあった。

こんなに過去形で書いているのは、旅行スタイルが自動車+スマホに変わったという理由も大きいのだけど、ある時ツーリングマップルから折り畳みの広域地図が無くなってしまったからだ。縮尺の小さい地図自体は何ページかに渡って収録されているがこま切れなのでとても見辛く、大きな地図を広げてルートを考えたり仲間と全国地図を見ながら思い出話をすることもできなくなった(なお全国地図は一歩先に地方の白地図に変わっており、この変更は寂しいが納得もしていた)。

縮尺を自由に変えられるオンライン地図が普及した現代において紙媒体の一番の魅力は「広域地図でも情報密度を落とさず、物理的な面積を生かして一覧性と情報量を両立できること」だと思っていたので、正直ガッカリしてしまった。今思えばバイクでの休憩中に大きな地図を広げるのが大変とか、コストが掛かるとか、単に需要がないとかいろいろ理由はあったんだろう。

久々に最新版のツーリングマップルを見てみると、いつの間にか巻頭の広域地図が復活していた。現在は表が高速道路網、裏が白地図のようだ。私が好きだった頃とは変わってしまったが、やはり物理的に大きい地図を求める声は根強かったのかもしれない。

ツーリングマップルの名誉のために言っておくと、実際にライダーが走って書いたコメント群には他の地図にないオンリーワンの価値があり、これは全く変わらない。時代に合わせてアプリ版も配信しているし、これだけオンライン地図が普及してもなお毎年最新版を刊行できているのはひとえに編集部と読者のツーリング愛ゆえだと思う。

表紙の撥水加工がめくれて角も丸くぼろぼろになるまで使った古いツーリングマップルは最近すっかり本棚で眠っているが、こうして書いていると自覚している以上に思い入れが深いことに気づいた。久々に新しい版を買ってみようかな。

@m_shiroh
140文字以上の文章を書く練習をしています。