2024年3月1日、女性アイドルグループBEYOOOOONDSから一岡伶奈さんの卒業が発表された。人生で初めて好きになったグループの、初のメンバー卒業。それだけではない寂しさをここに書かせてほしい。
BEYOOOOONDS(ビヨーンズ)とは、モーニング娘。と同じハロー!プロジェクト(ハロプロ)に所属する女性アイドルグループである。コミカルな歌とダンスに寸劇を加えた独自の世界観が特徴で、年に一度は本格的な舞台演劇もおこなっている。公式サイトはこちら↓
アイドルの卒業は通常、発表からしばらくの期間に新曲を出したりグッズを発売したりして、最後は特別な衣装を着て華やかな卒業コンサートで盛大に見送られるものだ。少なくとも私がハロプロのファンになってから見送ったアイドルは皆そうだった。
しかし今回の卒業は、発表と同時。お知らせを見て愕然としながら公式サイトを開くと、プロフィールページから既に写真も名前も消えていた。今もまだ信じられない思いでいる。
卒業そのものへの予感と覚悟は多くのファンが腫物のように抱えていた。2023年末から体調不良で活動を休止しており、卒業の目安といわれる25歳も迎えたからだ。それでも元気に戻ってきてくれることを願っていた。まさか最後に一声を聞く機会も、ありがとうを伝える場も無いまま終わってしまうとは……。本人の体調と意志を尊重した結果だろうから、この形での卒業は今できる最良の選択だったはずで、それに文句を言う気持ちは微塵もない。でも大好きだから、ただただ寂しい。
長い研修生歴を経てデビューした経緯を持つ彼女は、ハロプロ屈指の苦労人と言われていた。昇格が決定した瞬間ステージ上で泣き崩れ、日頃厳しい先生が駆け寄って一緒に泣きながら肩を抱いた映像は、後から好きになった自分のようなファンも含め多くの人の心に刻まれている。その後も新グループの形が決まるまで不透明な期間を長く過ごし、やっとの思いでデビューした翌年にはコロナ禍に阻まれてコンサートツアーもイベントもほとんどが中止となった。
それでもYouTubeを中心に発信を続けてファンを増やし、2022年には初ツアー&武道館を大成功させ、2023年には海外のアイドルフェスにも出演した。シングル4枚、アルバム2枚、武道館2回。今年はJAPAN JAM2024初出演という大舞台も控えている。まだまだこれから活躍すべきグループであり、その中心にいるはずの人だった。
クールビューティーな見た目とは裏腹に、やわらかな声と穏やかな性格で誰からも愛される唯一無二の空気感を纏ういっちゃんは、BEYOOOOONDSの優しさの根源のような存在だ。グループの雰囲気のあたたかさは、最年長のいっちゃんがみんなに寄り添い、逆にみんなに支えられる関係を築ける人だからこそ形成された魅力だと思う。
いっちゃんが一言発するたびにどんな場所でも空気が和らいだ。逆にサプライズで泣き崩れるメンバーの中でも飄々として涙を見せない胆力も好きだった。推し変とかしないで……と言って武道館を湧かせた挨拶も、CHICA#TETSU4人で話しているふわふわな空気も、くるみんとの夫婦漫才も、リーダーズ3人の黄金バランスも、ひめちゃんとの息ぴったりなラジオも、ちょっと面白い話で披露された数々のエピソードも、ドクターイエローに出会った喜びを共有してくれた投稿も、ツッコミを会得すべく修練を積んだ動画も、ファンの自作Tを己のTシャツと命名した配信も、その時々で多様な顔を見せてくれる舞台の役たちも、全部全部大好きだ。
いっちゃんがいたから制作された楽曲たちがあった。いっちゃんが歌うからこそ心に響くソロパートがたくさんあった。BEYOOOOONDSとしてもっと長くもっと大きな舞台に立ってほしかったし、いっちゃんの優しい歌をずっと聴いていたかった。
この12人でいつまでも活動してほしいと願う気持ちが負担になっていなかっただろうか。寂しい悲しいと言うことが卒業という選択を責めるような形で届いてしまわないだろうか。新体制を応援することがいっちゃんの不在を薄れさせてしまったりしないだろうか。考えても仕方のないことばかり去来するけど、もっと見ていたかったという無念より、これまでたくさん見せてくれた笑顔と素晴らしいパフォーマンスに深く深く感謝したい。
グループはこれからも形を変えて続いていくし、11人のメンバーは一歩先に現実と向き合って前に進みながらファンに手を差し伸べてくれている。きっとこれからのBEYOOOOONDSもいっそう素晴らしい活躍をするだろう。でも空いた穴に慣れるにはもう少し時間が掛かりそう。せめて今は、いっちゃんが思うように活動できない心苦しさから少しでも解放されて、心身の回復に専念できる状態にあることを願うばかりだ。
どうか元気で、幸せでいて。この先も新しいレールを好きな方向へどんどん伸ばして、どこまでも走っていけますように。
↓研修生同期での座談会中、コースターがグラスにくっついて嬉しそうないっちゃんが好き。話を遮らないようにスタッフさんにだけアピールするのも、きしもんに拾ってもらって喜ぶ姿も、何もかも愛しい。