急に趣味の話をするが、自分はとある宇宙にサブ自我を所有し、そのサブ自我はおよそ一千万人の人と共有されている。なかなか人気の宇宙である。今日はそのとある宇宙を眺めるときの気分の話である。
この宇宙――仮に宇宙Fと呼ぶ――は、我々の存在する宇宙を下敷きとして構築されている。そのため、そこに発現・生息する生命のかたちも、我々の宇宙と似通っている。我々の世界にp種・q種・r種の大まかに三種族があることを、宇宙Fも踏襲している(※1)。
ここで自分にとって問題となるのは、宇宙Fが我々の宇宙におけるqバー解放戦争後に発生したという時系列を持ちながら、我々の宇宙の起源からを踏襲しているため、q種が支配種族であった当時の生命も観測できるということだ(※2)。しかし、p・q・r種の数量的バランスが崩れると、解放戦争後に発現した宇宙として恰好がつかない(ほかのもっと身も蓋もない理由もある)。ではどうするかというと、過去存在したq種のキー的個体を、p種あるいはr種だったことにしてしまうのである。これで単純な数量的バランスはとれることになる。
これだけなら別に(異論のある自我共有者もおられようが)よいのだが、自分がここで問題にしたいのは、q種支配の世界でp/r種が突如配置されることの不自然を、おおよそ「対象個体のθ/μ化」で解決してしまうことである。
いや、中にはただのα-p種として発現した個体(複製元ではα-q種)もいるのだが、のちにその同位体としてθ-p種が登場してしまった。αであったにもかかわらず、θ化されてしまうのである。これは我々の宇宙史においてq種であった個体を宇宙Fでもq種として発生させた例の中にはあまり見られない現象である(※3)。
自分にはこれが、この宇宙Fにおける主体が結局いずれなのかを示しているように思える。θ/μ化されるということは、α性を剥奪されるということだからである。
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※1:この三種以外にももちろん多くの種族が存在するが、宇宙Fはそこに触れられる階層にまだいない。
※2:下位宇宙なので、その時空内に存在するすべての軸は当然(時間含めて)上にも下にもスクロールできる。ただし介入は禁止である。
※3:「あまり見られない」というのは、「ちょっとはある」ということである。たとえば、もともとθ性を含んでいたα-q種個体が、θ-q種同位体を発現させた例は思い返すだけで1件、α-q種個体がμ-q種個体として発現した例は2件ある(もっとあるかもしれない)。