「原爆の父」と呼ばれる物理学者のオッペンハイマーを題材とした映画ということで、彼がどのような人物で具体的にどのようなことをしたのかはたいして知らなかったものの、以前から彼に興味があったので早速観てきました。
日本では公開されて間もないので、ネタバレはなるべくせずに私が観て思ったことをさらっと書いておきます。
(それが良いとか悪いとかでなく事実として)今の世界は当時の科学と政治、そして国家の相互扶助により発展してできているのだということを改めて感じたし、物事は大きくなればなるほど複雑になり、一部を取り出して何らかの判断を下すことは恐ろしく困難なのだと思いました。
月並みな意見なんですが、「知識や道具などは必ずしもそれ自体に良し悪しがあるのではなく、それを使う人間次第でどのようにもなる」とも思います。ラストのオッペンハイマーのセリフが非常に印象的で、私はそれをそんなふうに解釈しました。
そのほかの特に印象に残ったこととして、オッペンハイマーの名言と言われる言葉が作中に二度出てくるのですが、最初の描写がまさしく神託のようだと思いました。好奇心と快楽と破滅は表裏一体……かもしれない……。
彼は彼なりの信念を抱いて物事を成したのだろうけど、その代償は彼という一人の人間が抱えるには重すぎるものだろうと考えると、胸が痛みます。それと同時に「他に方法はなかったんだろうか」とも思います。とはいえさまざまな状況を見ていくと、やはりすべての人間にベストな決断など存在しないのだな……と何ともやるせない気持ちになります。
人間はどこへ向かうのか……みたいな途方もなく虚しい気持ちになりましたが、そういったものを認識することができたので、観てよかったです。(でも上映時間3時間が座りっぱなしという意味で結構きつかった……というのはここだけの話)