映画「法廷遊戯」雑記

雫石
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※めちゃくちゃネタバレ

※原作未読

馨がとにかくクレバーでよかった。一番頭の良い人間が勝つのが最高!復讐にしては感情の表出が薄い気もしなくもないけど、法律の世界の人たちのお話なので、そこは切り分けられる人たちじゃないとおかしいんだよな。だし、そう考えると、感情と罪・罰の切り分けが出来ている人ほど納得いく結末を迎えられたような気がする。

馨、なにも死なんでも、とは思ったけど、死ねば死んだで美鈴からセイギを奪えるわけで、大切な家族を奪われる苦しみ、みたいな同害報復ってことになったのかな。いやここちょっと飲み込めてないかもな……

一番酷い結末を迎えることになったのが美鈴なのはなんか、若干のモヤモヤを抱えないわけではないけども……、女性だから感情的になるとかそういう目で見てはいないよな……?みたいな……、でもまあ、美鈴はセイギ・馨と比べて圧倒的に心が死んでしまった時期も早いし受けた被害が重かったよな。という納得点はある。

美鈴が受けてきた被害に対する同害報復は無理じゃんね、とも思うけど、そこはセイギについていって法律を学んだ美鈴と、報復を望んで法律を学んだ馨の道の違いでもあるな。など。やっぱり馨が一番強い。でもそれも、青年期まで豊かな家庭で育つことができたからで……みたいな虚しさもある。セイギのいいところは、自分と違って恵まれた家庭環境にいた馨を妬むことなく、それを奪ってしまったことに向き合えたところだなと思った。向き合えたんだよな……!?あれってあのあと出頭するんだよね!?

映画としての組み立ての話なんだけど、正直途中で、これやっぱ小説で読めばよかったな!と思った。ミステリーってやっぱり自分のペースで読み進めながら考えたり読むのを中断してるときに思い返して考えたりした方が分かる。

でも一時停止せずに通しで見ても分かるように、大事な情報にフックを仕掛けておいてるかんじはした!原作を読んでないのでどこまでが映画なりの演出なのか分からないけども、たとえば冒頭の無辜ゲームで2回とも出てくるすげー性格悪い学生のアクの強さ、から来る「なんで殺人未遂した奴がロースクールになんかいるんだよ」、あれが単にリークされた児童養護施設だけの話じゃなかった……とか、そういえば一番最初の駅のホームの映像もそうだ。いきなり電車の音から不穏に始まって、なんだこれ?ってちゃんと記憶に残る。

あとは馨のナイフとそれに付いてた天秤のチャーム、なんだそれ中二か?と思ったけどあれもやっぱり印象に残るので、お墓のシーンですぐに馨の仕掛けだって分かるし

一番すげー!って思ったのは生瀬さんの起用だった。生瀬さんの出番こんだけ!?と思ったけど、あの短くてすぐに忘れちゃいそうな回想シーンに有名どころを起用することでしっかり記憶に残って、セイギと美鈴がどちらも警察(大人)から(あれ生瀬さん弁護士だっけどうだったっけ……)「君はやり直せる」と言われたのにまったく違う受け取り方をして違う結末を迎えたっていうのが一回の視聴でちゃんと分かる、すごい。限られた尺の中で、本来なら読者それぞれのペースで理解していくミステリー小説を映画として分かりやすくする手腕の勉強になった。気がする。台詞うろ覚えだから間違ってるかもしらんが……

あとは単純にセイギと美鈴の関係がめちゃ好きだった。恋愛ではなく、依存ではあったけど、家族としての愛はたしかにあったよね。恋愛の要素が全くなかったのは本当によかったなあ!思春期の少年少女が一緒にいたところで恋愛にしなくたって愛は描けるんだよ。あと最後の面会の杉崎花さんすごかったです。

何の構成も考えてないし軽くいい加減に書くつもりだったのにやけに長くなった。おわり。

@madayorudayo
noteに書くほどちゃんとしてない長文だったりパーソナルな文を置きたい あまりおすすめはしない