以前お付き合いをしていた子の夢を見る。別れてから3〜4年も経っているのにいまだに夢に現れる。人が夢を見ることについてはまだ謎が多いようだが、僕が彼女のことを忘れられないでいるということは探究するまでもない。その子とは1年半ほどお付き合いしていたため短くも長くもない関係だったが、僕は心の底から好きだった。中学時代からその子が好きだった僕は当時スポーツに専念していたため気持ちを伝えることなく心にしまって過ごしていたが、数年後に意を決して扉を開き気持ちを伝えた。僕に初めて彼女ができた瞬間だった。
男子校で過ごしてきた僕は女性との関わりなどこれっぽっちもなく、初めてデートに誘うのはもちろん告白する時の心臓音は雷に匹敵するほどの音量で体内を鳴り響いた。見事お付き合いすることになったものの、あまりの照れくささ(本音は可愛さ)に顔を合わせることができず手汗びっしょりだったこともあった。カッフェに行ってウハウハしたり、他県に旅行をしてイチャイチャしたり、初めてのチョメチョメをしたりと満喫した期間を過ごしてきたのも束の間。隣にいることが当たり前の環境に慣れなのか飽きなのか、付き合いたての頃とは別人のような感情となってしまった。初めての彼女だから好きだったのか、好きな人が彼女なのか。20歳にも満たない未熟者な僕は、その答えを探るという言い訳のもと1年半という、判断するには到底短い期間で別れる決断をした。別れた時、親しい友からの慰めの言葉には、最も優しい毒がもられていた。こういう時、映画のフィルムみたいに記憶が物理的な物であればカットしてすぐに忘れてしまえるのにと思う。でも忘れたくても忘れることはできず、現実逃避をしたところで現状が変わることはないので、思い出すことができないくらいに他の異性と遊ぶことしかできない。味のしないガムを噛むかの如く。
つくづく男(僕)はバカだと思う。過ちから長すぎる年月を経てようやくその答えがわかる。女は別れて1ヶ月以内、男は別れて1ヶ月後〜生涯にわたって心に傷が刻まれる。男が長文とともに復縁の話を持ち出すも、女はすでに見向きもしてないので、そのときやっと気づく愚かなオスが誕生する。彼女が僕なんかよりも良い人と出会っていることを願う、なんてことは言わない。もう一度戻ってきてほしい。話がしたいなんて言わない。会いたい。一回だけじゃいやだ。10回も20回も会いたい。愚かなボクを許してなんて言わないけど、愚かだったねと笑いながら復縁してくれたらと思う。幸せにするなんてカッコいいことは言えない。でも一緒に幸せになろうとは言える。キモいと思われるかもしれない。ドン引きされているかもしれない。それでもこれが僕の本音だ。
片想いをしている時が一番楽しいように、僕はいま贅沢者であることを感じている。95%振られるとわかっていたら5%の確率で振り向いてくれるかもしれない。でも告白しないままでいたら5%の確率を維持したままでもいられる。その贅沢を味わい続ける道を選ぶこともできるが、強欲な僕は5%欠けるリスクもとりたくないからパーセンテージを上げるべくさらに足掻く。始祖ユミルが2000年間フリッツ王を愛し続けたように。刻まれた傷を癒すべく失った恋を僕は文章で埋めることしかできない。