斜線堂有紀『本の背骨が最後に残る』

真冬の海
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公開:2024/11/10

読書会課題図書で初めて手にとった作家さん

とても面白く、大好きな世界でした

癖に勢い良く刺さってしまい感想を文章にするのがとても難しいです何日も考え続ける努力が必要でした、が、まだ纏まっていません

読後の熱がさめやらず、ざわざわする自分の感情を落ち着いて見つめることがなかなかできない感じです

『本の背骨が最後に残る』

『本は背骨が最初に形成る』

表紙と裏表紙のような二作品

それぞれタイトルの"の" と "は"の違いが気になった

最後の物語の綴が徐々に自分の気持ちを明確にして本になる決断をしたように、その意志を背骨と表現しているのかな?

そこから最初のタイトル、命ある本が亡くなってしまっても物語を語り続けてゆく意志は残り続けるところに繋がっているのかと思う

人には物語が必要、という言葉を思い出した

十の語る物語はちょっと独特で、私の知っているお話とは細部が違っている→勝者の語り継ぐものなのだなと改めて戦慄した。なので全て聴いてみたい

『死して屍知る者無し』

想像とかSFとかファンタジーなところが無くて一番恐ろしい作品だった

何処かにこんなカルト集団があってもおかしくないくらい、日常が成立していると思う…嫌すぎるけれども

転化は死の恐怖を未来への希望にする為の方便としても、だからってわざわざ転化を早めるとかコミュニティとしてのメリットがまるで理解できなくて…終始師の目的が見えないままなのが怖かった

『ドッペルイェーガー』

慶樹のコピーデータを好きにしているのだと分かった瞬間に順列都市を思い出した、けれどこちらはずっとジャパニーズホラー風味でじっとり重かった

リアルでピアノを教えているのが非常に良かった! それを知った後からはケイジュを追い詰める描写時には私の頭の中でピアノが響き続けていた

個人的に犯罪とは思わないパターンだけれど、ちょっと人には言わない・個人で愉しむ・がっちり年齢制限の必要な趣味かなと思う

婚約者とはいえ人の趣味にあそこまで踏み込むのはなあ…内容の説明もしたし大人だし…

音の出ないピアノに身体を預け目を閉じるラストが無為な日々の終わりと静謐さが感じられてとても良かった

『痛妃婚姻譚』

今まで私の中で島田荘司『異邦の騎士』が最高に好きな恋愛小説でしたが、こちらがトップになりそうな勢い

幼馴染の日々の余りに素朴なリリカルさと現在目の前の残酷で比類無く完璧な美しさの対比が素晴しい・脳内直視が難しい

最終日衣装替え後は一行一行にくらくらした!

最期まで離れず一緒にいられた、絢爛師として他の誰にも石榴に触れさせなかった、孔雀だけが彼女をあの美の高みへと連れてゆく事ができた、けれども耐え難い痛みだけがそれら全てを担保していたとか…語彙がなくて読後から感情をどう表現したら適切なのかまだ困っているのがこのあたり

ふたりの名前が一度も出なかったのも良かった

愚かなまでに不器用で一途な恋心が大好きなのだと改めて思う見守り隊

『『金魚姫の物語』』

これだけタイトルに『』が付けられていて何故なのかちょっと分からなかった

嫌いだと言っていた写真の中で、憂は准にとっての綺麗な金魚になった。ファインダー越しに見えたそのもの、瞬間を切り取って映し残すのが写真だから、それは准にとっての真実であった

くらいの浅い理解しかできていません

顧問の先生は、願いとか願望のように受け取ったようだけど准はそれらを否定していたので…准…いつも言葉が足りぬ…そこがこの作品の彩りなのだろうけど…

憂らしいラストが絵になる寂寞感そこは写真ではなく目に焼き付けたのかなと思った

『デウス・エクス・セラピー』

これはほんと酷くて良いSF

ヴァーチャルではなく実在した過去を結末を改変せずに満足感だけを得るとか発想が面白すぎたエゴ全開にも程がある

なんだか掴みどころがなくてフワッフワだなあと感じたロスはタネ明かし後もやはりフワッフワだった

アニメPSYCHO-PASSでいうところのユーストレス症候群みたいな症状なのかな? 未来らしい病気だと思えた、が、フリーデの時代の船乗りさんから見てもロスもフリーデも同じようにメンタル不調な人物に見える普遍性も上手く描かれているなと思った

映画トータル・リコールが大好きなのでこの構造がかなり好みだった