もう何十年も解けない、有名な運用的な問題があった。営業の締めが昼。前工程は情報を精査して、前工程からの分厚い伝票の塊が職場に来るのが夕方。このお陰でこの職場の人たちは通常の勤務時間をシフトして対応していた。家族の為にも普通の時間で働きたいよな。。。
私の前任者達が沢山いて死屍累々なのは知っていたので、私としてはこの問題に取り組むのは嫌で避けていたのだが、ある日とうとう捕まってしまう。これは腹を括るしか無い。かといって、前任者と同様のシステム的な解決をしようとすると数年以上を無駄に溶かしていくのが分かっていた。この問題は真っ向から戦ってはいけないのだ。
まずは業務を観察。物凄いスピードで処理していくのだが、いかんせん伝票枚数が多すぎる。これが夜遅くなる理由か。。。ん、これはどうやらグルーピング作業に過ぎないらしい。ロジックを聞くと、どこを回れば何時間が必要なのか頭の中で点を結んでループを描いて計算しているらしい。ループが一定の長さを超えたら2つに分割するという作業の様だ。つまり、彼らは抽象的な世界を見ていて眼の前のユークリッド空間に広がる点を結んでループの数を一定数以下に収めるというパズルをやっているらしい。そして伝票をグルーピングして重ねながら、そこに見えないポストイットを貼って計算した数字を書いているらしい。
伝票の中にノイズ伝票が混入していて、前任者たちは全員、このノイズ伝票を綺麗に除去しようと躍起になっていた。彼らはスタート地点にすら立てていないのだ。しかしシステム屋というのはデータを保証する所から始めようとするので仕方がない。しかし私はシステム屋ではないので自由なのだ。
「ノイズがあったら、結果が大幅に狂いますか?」
「そんなことないですね。どれがノイズなのか分かるし。ただし、伝票を前工程に弾いて返すのが面倒なだけで」
(おー、そりゃ聞いてない情報だわ)
いきなり提案しても良いのだが、現場という職場は部外者を敵視するのでまずは何日も通ってこっちの本気度を見せる。。。
3日目 「分かりました。前工程が情報を精査している間に、私達は不完全なデータを貰って、それで朝から予習を開始しましょう。私が一覧表と分析表を作るので、完全なデータが来るまではシミュレーション計画を頭の中で準備してください。実際に伝票が来たら、どこがヤバイのかはもう分かっているので機械的な単純作業です。どうしてもノイズを消したいと言うなら、機械学習で消します。徐々に、8時出社まで持っていきましょう。」
「!!! 私はできそうですが、もう一人の担当ができるかどうか」
「聞いてみましょうか・・・ やってみたいそうなので、では明日からやりましょうか!」
「・・・ あなたはいったい。。。何をする人なんですか?」
「私は通りすがりの、こういう事を現場と進める人です」