私、マキシマムザホルモンというバンドを愛しています。
小中学生の頃、排他的な地域、排他的な時代で育ったオタクの私はとうぜん肩身が狭くて、うちに帰ると同人サイトでこっそり二次創作を漁っていました。
あの世代のオタクのお姉様方って、たくましくて趣味がいい。絵がうまくて、センスが良くて、たくましいオタクのお姉様たちみたいになりたかった私は、その方たちが聞いている音楽を、地元のゲオで片っ端からアルバムを借りて楽しんでいました。
マキシマムザホルモンはそのうちの一つでした。
ティーンズになりたての幼い子供だった私は、それまでドラマの主題歌やジャニーズ、AKBなどが音楽の中心で、ホルモンみたいな下品で歌詞の意味がわからない曲は刺激が強すぎました。
初めて聴いたのは絶望ビリーでした。MVもまた、脳天を突き刺す衝撃でした。カッコ良すぎて訳がわからなかった。
(その後、デスノートの主題歌と聴いて納得しました。その頃の私はもうバクマン。世代でした)
オタクの私にしかわからない、素晴らしい居場所を見つけたと思っていました。
それからホルモンの曲を狂ったように聴きました。古いアルバムってね、iTunesに入れても「トラック1」などと曲名が表示されてしまうので、曲名を覚えるのに苦労しました。その名残で、未だにアカギとシミが同じ引き出しに入っています。
中学3年生のときでした。同じクラスになったことのない男の子からメールが来ました。野球部で、見た目の厳つい男子でした。どうやら同じクラスの男子から私のメールアドレスを入手したようでした。
やり取りに付き合わない道理もないし、しばらく他愛のない返答をしていました。続けていると、
「鳴海さん、ホルモン好きなのって本当?笑」
と返信が来ました。
当時同級生でホルモンを好きな人間は知る限りいませんでした。私はとにかく嬉しくて、どう返信したか分からないけど、肯定しました。
「じゃあエロいことも好きなんだ笑笑」
と、言われました。
冷や水を浴びました。ホルモンの歌詞やパフォーマンスがいくら下品でも、彼らの伝えたいことが単なる下品さだけではないこと、幼いながらに私は分かっていたつもりでした。同胞を見つけたと思って歓迎したら、後ろから刺されたのです。
それからのことは覚えていません。
「ホルモンを好きだとエロいやつだと思われる」ということだけがインプットされました。私はまたしばらく、肩身の狭い思いをして生きてきました。
大学生になりました。なんやかんやあって軽音サークルに入部しました。サークル内にオタクが多かったのもあるのですが、ホルモンを知ってる人、好きな人の多いことに感激しました。
初心者ながらにパートはドラムを選択しました。ナヲに憧れていたからです。
ありがたいことに、その後ホルモンのコピーバンドを組んだんです。ドラムボーカルとして! かなり下手だったし技量は追いついていなかったけど、本当に本当に楽しかったです。何より、余計なことを言われず、楽しめました。ハードな音楽は苦手でも、ホルモンは好きと言ってくれる同期が頭を前後に振ってくれていたのが印象的でした。散々な出来だったけど絶望ビリーもコピーしました。一番よくできたのはぶっ生き返すでした。
いま。なぜこの話をしているかと言うと。かなりイラついていて。
中学の頃に冷や水を浴びた経験を、再演するような主旨を言われたのです。
覚えてないけど私はnoteの自己紹介記事か何かで、ホルモンが好きみたいなことを公言しています。それに対して、「自衛しなきゃキモい男が寄ってくるよね(ホルモン好きを自称したらキモい男がやってくるので、SNSの使い方を見直したらどう?)」というようなことを言われました。
キメー男なんか、こちらがどう頑張ってもやってきます。逆に聞きたいんだけど、ホルモンが好きって言うのをやめたところで自衛になり得ますか?
私、ジムでトレーニングするのが趣味です。その分野の、男性支持率が高いことも知っています。本当は女性用ジムに行きたいけど、生活圏に存在しないから、女性が比較的多い時間帯を見つけて、狙ってその時間帯に行きます。これは、自衛ですね。当然の如くやっています。なぜなら不快な思いをしたくないから。
女性専用エリアがあったジムに通ってた時期もありました。共用エリアにしかないマシンでトレーニングしていると、フォームがどうとかと声をかけられました。怖かったですよ。安全に収束して良かったです。
私は男性人口の多いジャンルに惹かれがちです。わざとやってる訳じゃないです。プロレスもそうだし。最近ではバイクに惹かれているし。ツーリングしてSAなどに駐車していると、それだけで男性から声がかかるそうです。気をつけようがねえじゃん。その声かけが善意だろうが悪意だろうが、ジャッジするすべはありません。
話を戻しますが、男性人口の多い趣味を好きになるだけで危険になるんですか? 女は好きになっちゃいけない? 好きになってもいいけど、自衛が必要? もう十分やってるつもりなんだけどな。
オタクだからとかじゃなくて、私が肩身を狭くした理由は性差です。襲われる脅威の少ない性別が、自衛しろだとか、とにかく怒りが止まりません。
別に女に生まれたいなんて頼んでねえし。あたしは女だなあ! と思いながら生きてもない。私という魂の容れ物が、たまたま女体というだけだ。ただそれだけで、勝手にムラつかれる。外見で判断されて下心を掴ませようとしてくる。これが人間のコミュニケーションか? 獣だったら納得します。ご自身で獣ですと自己紹介をしている? 男の性欲は本能だから仕方ない?気色わりーな、関わってくるな。
私が男だったら、こんな不快にならなくて済むのに。はいはい、ホルモン好きって公言すんのやめますよ。それが自衛になるんでしょ。たとえ男にムラつかれたとして、0:100で相手が悪いわけではないんでしょ。私が、男性人口の多いコンテンツのファンを自称してることによって、1:99くらいで私が悪くなるんだろ。2:98か? 50:50?それとも私が悪い比率は過半数か? 女が悪いか?
静かにしてるわ、せっかく誇りだったのに。私が叩いたチューラブも、ぶっ生き返すもシミもメガラバも、絶望ビリーも、私みたいな性別は関わんなきゃよかったね。関わるんだったらそれ相応のリスクを覚悟しろ? 黙れ。安全地帯からこちらに石を投げてくるな。片っ端からデスノートに書き込んでやる。