この記事はFediverse Advent Calendar 2023の5日目の記事です。
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2023年10月9日、いつもどおり平和なFediverseのTLに突如「セミマゲドン」という出オチ感あふれる謎ワードが出現した。
https://fedibird.com/@noellabo/111204716111673172
セミマゲドンを知らない人々が「セミマゲドン何…?」とポカンとする一方で、セミマゲドンが映画のタイトルだと知る人々が「誰だセミマゲドン観せたの」とざわつき始める。そう、Fediverseに私が生えてこのかたずっとお世話になり続けている恩人にセミマゲドンを見せてしまった元凶こそ
https://fedibird.com/@makihara/111204724386322728
私です。
ウォッチパーティーから半年たって不意打ちのように出現し、タイトルだけで笑いを搔っ攫っていったセミマゲドン。私が開催したウォッチパーティーの中でも特に「こりゃひでえ」と笑い、なおかつ参加者のみんながたのしそうだった作品として、今年の締めくくりに「セミマゲドン」の話をしよう。
セミマゲドン is 何
セミマゲドンとは、殺人ゼミの大群との戦いを縦糸に、男の誇りと友情を横糸にして、渾身のVFXとアニマトロニクスで彩った、正統派モンスターパニック映画になりたかった何かである。
もと大リーガー・いま無職のジョニーと、彼の恋人でダンサー志望・いまストリッパーのシンディ。彼ら2人共通の親友でバーテンダーのランディ、セミの専門家ネルソンを加えた4人が巨大に変異し人を襲うようになったセミの大群に立ち向かう。果たして4人は、そして人類は生き残れるのか……というのがだいたいのあらすじ。セミがでかい。そして造形がもっちりしている。このもっちりゼミたちがもっさりと、ひたすら人を襲っていく。だいたい首を狙うため、襲われた人は「首をやられたー」と言いながら首をぶっ刺されたり、空中に持ち上げられたり、首だけちぎって持っていかれたりする。死に方のパターンが少ないせいで、ゴアシーンの回数が多く感じられてお得だ。お得なの。
なお主人公のジョニーのメインウェポンは元大リーガーらしく木製バットだが、セミをフルスイングで打撃すると打たれたセミは爆発する。なんでやねん。作中の説によると、「セミは樹液中の糖分を体内にため込むが、糖分は爆発物なので刺激を与えると爆発する」……らしい。なるほど科学的だ。セミを捕まえるときはくれぐれも強い衝撃を与えないように用心したい。
セミのかわいい造形と手作りの温かみを感じるVFXに慣れてくると、ちゃんとしたモンスターパニックに見えてくるし、人間パートのシナリオに力が入っており筋道のあるストーリーが展開されるので、Z級映画の中では比較的「何見てるんだっけ」が発生しにくい……と思う。ちょっと自信がなくなってきた。感想には個人差があります。
こういう映画をひとりで観るのはつらい。以前デビルシャークを一人で観たときは苦痛に耐えきれず早送りしてしまった。どんなに胡乱な映画であっても完成されリリースまで漕ぎ着けたのならその時点で「勝ち」なのだ。敬意を表してきちんと向き合いたい。
ひとりで観るのがつらいなら、誰かと観ればいいじゃない。そういうときこそウォッチパーティーだ。他人をセミに巻き込もう。
映画の話したいから、みんなで映画観ようぜ
今でこそ何年も前からFediverseにいるみたいな顔して日々くだらないことをぺらぺらと綴っている私だが、Fedibirdにアカウントを生やして本格的に運用し始めたのは2022年11月4日、ほんの1年ちょっと前である。この場に馴染んでいられるのはFediverseで活動してきた先達のおかげに他ならない。不慣れな最初期から今のアカウントへのお引越しまで、Fediverse古参の皆さんにはとても親切にしていただき未だ感謝が絶えない。
基本、Fediverseの住人は困っている誰かを見かけると通りすがりにスッと手を差し伸べてくれる。親切な近所の人たちみたいな感覚だ。Fediverseは他の大規模なSNSよりも人との距離を調節しやすく落ち着いて過ごせる。
声をかけやすい、断られてもあまり気にならない、バカ話をしやすい。そんなリラックスした空気に助けられて、今年いちばんよくやっている遊びがウォッチパーティーだ。
ここで言うウォッチパーティーとは、Amazonプライムビデオを使ってみんなで映像作品を同時に観る機能である。チャット機能も付いているので、会話やメモをしながら映像作品を鑑賞し、感想をその場で交換できる。何より部屋で酒を飲みながら映画を観られるのがありがたい。
今年2月、にじやすさんからミッドサマーのウォッチパーティーに誘ってもらったのをきっかけに、自分でも作品を選んでウォッチパーティーを行うようになり、開催した本数は全37作。よそのウォッチパーティーにも参加しているので、今年ウォッチパーティーで観た映画はおそらく70作を超える。
ラインアップはこちら
https://fedibird.com/@makihara/111317132985379551
https://fedibird.com/@makihara/111317147261220166
ウォッチパーティーのいいところは、映画の感想がその場で得られることだ。しかも時間をかけて立派に成形されたレビューではなく、リアルタイムの悲鳴やため息、笑い、涙、そういったライブ感あふれる感情の発露が目の前で見られる。映画の話をしたければ、自ら映画の話を始めればいい。もっと話をしたければ、会場を設けて積極的に観てもらえばいいのだ。
当初は一人で観るには勇気の要る怖い作品をみんなで観ようというコンセプトでホラー作品を中心にチョイスしていたのだが、5月には早くもホラー縛りを放棄し、音楽、暴力、カーアクション、すけべ、SFと何でもありのラインナップになっている。
セミマゲドンのウォッチパーティーは、そんな何でもありになる前の4月1日に、一応ホラー枠として開催された。
セミ映画観せるぞ
2/25「#ミッドサマー春の人生BANまつり」、3/11「#ヘレディタリー春の交通安全強化デー」とアリ・アスター監督のガチで怖いホラー作品を立て続けにみんなで観たあと、次に何を観るかでアンケートを取った。
https://fedibird.com/@makihara/110013825356563589
タイトルだけでわかるように、いずれも相当根性の入ったZ級映画である。3日に及ぶデッドヒートの結果、居並ぶZ級モンパニ映画を抑えて「必殺!恐竜神父」のウォッチパーティーが開催される運びと相成った。誰が観るんだろうと不安を感じながら恐るおそるウォッチパーティー部屋を作成したら、当日なんと参加者が複数入室してくれた。観る人がいるんだ、恐竜神父を。
しかもいざみんなで観てみれば、やる気と予算を削りまくった演出にゲラゲラ笑い、唐突なストーリー展開にツッコミを入れ、最後には「ぜんぜんわかんなかったねー」と感想を共有して笑顔で解散するという、なかなかたのしいウォッチパーティーになってしまった。ひょっとして出来の悪い作品をみんなで観るのも悪くないのではないだろうか。「一人で観るのがしんどいので誰かと観たい」という動機においてはガチで怖いホラーと変わらないのではないだろうか。
Z級映画も観たい人が存在する。確信を持った私はアンケート最下位のセミマゲドンを誰か一緒に観ないかTLに呼びかけてみた。
すると、
https://mstdn.jp/@for20minute/110061106938463102
獲物がかかったぞ!!!
善は急げ。いや、善とは何か。ともあれ手早くウォッチパーティーの日取りを相談し、XデーもといZデーは4/1と決定した。
全人類、虫の息
約束の日。ウォッチパーティー部屋には多数の参加者が集まってくださった。いいんですか、セミマゲドンですよ。どうして来ちゃったんですか。
そして始まる本編。開幕即おねえさんのストリップで気まずい空気が流れるチャット欄。巨大ゼミの造形を見て温かな笑いに溢れるチャット欄。雑なセミに雑に殺される人類。あっという間に町どころかアメリカ全土に広がった巨大ゼミ。頭にアルミホイルを巻いて無敵になったと言い張るじいさんに募る不安感。バットで打たれて吹っ飛んで、ビルもろとも景気よく爆発するセミ。そしてジョニーの運命を決する巨大ゼミとの対決――。
作品自体もさることながら、みんなの反応がおもしろい。有識者のちゃんとしたレビューよりリアルタイムの悲鳴の方が栄養価高い点があるくらいだ。いいウォッチパーティーになった。セミマゲドンはいいぞ(頭にアルミホイルを巻きながら)。
同時視聴たのしい部
セミマゲドンのウォッチパーティーから1週間後、「#コクソンお祓いバトル2023」を開催したあと、ウォッチパーティーのたびに異なるタグを作っていたのでは検索が面倒になると気付いたため、以降は「#同時視聴たのしい部」に統一することにした。このタグは誰でも・どこのサーバからでも・どんな作品でも使えるように言葉を選んで作ったハッシュタグなので、どなたさまもご自由にお使いいただきたい。このタグで検索するとさまざまな映像作品の感想が飛び交っているのが見られるので、映画好きの鳴き声を摂取したい人にもおすすめです。
ハチ映画も観せるぞ
さて、ここまでセミマゲドンの話ばかりしてきて今更だが、私が本気でおすすめするモンスターパニックの名作は「ハチ映画見せるぞ」の謎絵文字でおなじみ「スタング 人喰い巨大蜂の襲来」である。
巨大蜂のかっこいい造形とリアルな動きを実現した渾身のアニマトロニクス、容赦のない暴力と人体損壊描写、舞台となる閉ざされた洋館の耽美な薄気味悪さ、トンデモ設定に説得力を持たせて余りある実力派俳優陣の緊張感あふれる演技、どこを切り取っても見どころばかりのモンスターパニックの佳作である。セミの出来にMPを削られたらハチに癒されてください。スタングはいいぞ。