デッサンを始めてしまった

まきはら
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公開:2025/12/4

※こちらの記事は「推しコンカレンダー Advent Calendar 2025」4日目の記事です。

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デッサン ベートーヴェン面取り 半面

こいつは最初に描いたベートーヴェンの面取りデスマスク(https://sekkouzou.com/?pid=22360333)。ポリゴン状で形状を理解しやすいが、それだけにちょっといい加減に描くとデッサン狂いがすぐ発見されてしまう恐ろしいモチーフだ。こんなのを何時間もかけてネチネチと仕上げていく。

前置きしますが、絵が上手くなりたくてデッサンを練習するのは無駄が多いです。イラスト制作Tipsを見ながら家で練習する方がピンポイントで問題解決できて早いし実りも多い。デッサンはカネも時間もかかってコスパタイパともによくありません。とはいえ、やってみてわかったことも多いのでここに感想をだらだらと書き連ねていきます。

そもそもなんでデッサンを?

今年の2月に知り合いの洋画家さんとお話ししていて、長年気になっていたことをふと尋ねてみた。

「デッサンやってみたいんですけど、どんな感じですかね?」

洋画家さんは何かしらピンとくるものがあったらしく、「あ、わかりますよ気になるの」とうなずき、「あれは体と感覚で悟ってもらうもので、口頭での説明が難しいんです。坐禅みたいなもんだから集中力と体力あるうちにやっといた方がいいですよ」と勧めてくれた。当時は猫の看取りからの引っ越しの最中で時間的にも精神的にも余裕がなく、来年の春くらいからのんびりと始められるといいかな、程度で話は終わった。

それなりに長めにイラストを描いてはいるが、そのときそのときで気になったものを練習したり描く対象を調べたりなど独学で練習して済ませていて、それで十分だった。本格的な絵画の勉強はやったことがない。

が、この秋ついに「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!描けねええ!!!!!!」と発作を起こしてしまった。きっかけはXのおすすめに滝のように流れてきた大量のイラストTipsである。あれを見続けていると「上達しろ」という圧がすごい。圧だけはすごいのに、求めていない技法ばかりが流れてくる。私が今ほしいのはきれいに見せる小技いろいろじゃない。たぶん、小技をのせるための基礎の土台ができてないのだ。

思いついたときに行動しないと一生動かないかもしれない。危機感を抱いたその日のうちに、くだんの洋画家さんの教室へ「まえ話してたデッサンをやりたいんですが!!」と勢いよく申込の電話をかけた。

デッサンって何するんですか

デッサンでやることは以下の通り。

徹底的に手癖と先入観を矯正する

人間は無意識のうちに、見たものを頭で処理してから記憶し、その変形した記憶を元に絵を描いている。描き慣れている人ほど手癖としてこの傾向が出やすい。デッサンでは手癖を徹底的に矯正し、目の前にあるものを正確に紙に写し取っていく。この位置にこれがあり、影はこの濃度で、と目の前にある正解を描き写していく。何を描いているのかは一旦忘れた方がいい。

ずっと観察、たまに客観視

正確に描くには観察が欠かせない。というか時間の8割くらい観察でもいい。ただ、部分部分を観察しながら描き続けていると、どうしても全体がズレていく。10分描いたら一旦手を止めて、席を離れて遠くから絵とモチーフを見直す。今通っている教室は3時くらいになるとお茶に呼ばれて強制的に離席させられるのだが、休憩後に戻って絵を見直すと「わ!」と声を出すハメになり、しょぼくれながら残り時間で修正……というのを毎回やっている。

幾何と対比で位置合わせ

いわゆる「デッサン狂い」の見つけ方も教えてもらった。

  • 【位置が合っているか】例えば目の位置と耳の位置はどちらが高いか、みたいなポイントで位置合わせをしていく。

  • 【距離は合っているか】耳の長さがこのくらいだから首はもっと長いはずですよね、と基準になる長さをひとつ決めて比べたりする。

  • 【面積は合っているか】最初に描いたポリゴンベートーヴェンのように、顔の上にポイントを置いて面を作り、その面積が他と比べて広いか狭いかを確認する。

  • 【角度は合っているか】ポイントとポイントを結ぶ線は内向きか外向きか、次のポイントに向かう線の角度は、というように角度を探す。

「幾何だと思ってやってみてください」とのこと。

陰影の濃淡を見極める

隣接する面どうしは必ず角度が変わるので、同じ濃度の影が入ることはない。面の角度が少しでも違えば影には必ず濃度差が出る。また、どこが最も濃い影になるのかを探し出して、それ以外の部分は必ずそれより薄めに塗るようにする。

おおまかに塗りわけ、最後に細部

彫刻と同じく、最初は形をざっくり取り、大まかに塗りわけた時点で狂いがないか確認してから細部を描き込んでいく。最初の方で細部に手を付けるとなぜか位置がズレやすい。

アグリッパ像を描いてる途中の線画状態 まずはポリゴン状に形をとる

まずはこんな感じで大まかに形をとり、

デッサン アグリッパ像

影を描き込んでいくとこうなる。描きながら各部位の大きさや位置は調整していくので、こうして比較するとかなり変わっている。

これを描いているときも目や耳に影を描いた時点で位置がズレていることに気付き、左目と耳周辺をまるごと消して描き直すという面倒なことをやる羽目になった。ポリゴンの時点ではそんなにズレてなかったのになあ。うーん。

何となくわかってきたこと

デッサンはゲーム

デッサンは目の前にある正解を見て手元で描いてる不正解を直していく作業だ。不正解を見つける精度とスピードを上げるのがポイントかもしれない。デッサンは描く手数を減らしていくゲームだと思ってクリアしていく方がよさそうだ。

デザインと絵画の違い

絵画はモチーフを描くだけでなく周辺との関係を図りながら制作していくので、どこに何をどのように描くのかについて構図・明暗・配色をコントロールしながら1枚絵を作っていくことになる。ところがデザインとしてキャラ絵ひとつ・モチーフひとつを作る場合、どこに配置しても大丈夫なように作る必要があり、周辺の環境は後付けになるか全く無視して作った方がいいまである。良い悪いではなく何に使うのかで描き方は変わる。

答え合わせにもなる

よそに習いに行くことで、今までなんとなく身につけていた習慣がわりと正解だったのではという答え合わせにもなっている。例えば一旦描き終えたものをすぐ完成として公開するのではなく、翌朝まで置いて改めて見直し、手直し箇所がないか探したうえで問題なければ公開とする習慣が自然と身についていたが、これは教室でやっているお茶タイムと同じで頭のリセットになる。

今後について

前回デッサン中に「目を描こうとしてますね、目であることは一旦忘れて影だけ追ってください」と指導受けたのが結構な衝撃だった。イラストだと人物を描く、輪郭を線で取る、目・鼻・口を描く、といった手順で描いていくので、デッサンのように部分部分の陰影だけ取って、位置を調整しながら濃淡だけで差をつけていくという発想が全くなかった。描き方が根本的に違っていて、これをやりながらいつもの描き方とすり合わせていけばいいかな、と今では考えている。

さて次回はヴィーナス像(https://sekkouzou.com/?pid=22276507)で、描くとこ少ないからぜんぜんいけるやろ!とナメていたのだが、写真見ていると形がシンプルなだけにポイントを取りにくいし陰影を滑らかに仕上げなとそれっぽくならないかも……と不安になってきた。 ちょっとずつ「描き方」がわかってきたからかもしれないと期待しておこう。

@makihara
映画や音楽について書き散らす場所。好きなモンスターパニック映画は「殺人魚フライングキラー」「スタング 人喰い巨大蜂の襲来」「X-コンタクト」です。 fedibird.com/@makihara