『女の子って何でできてるか知ってる? 三つの素材があれば作れちゃうのよ。
・片方だけのイヤリング
・苺ミルク
・甘い涙
素材はどうやって集めるかって? いいことを教えてあげる。ママに聞いてみるの。片方だけ失くしちゃったイヤリングはない?って。女性ならみんな、お気に入りだけど片方だけ失くしてしまったイヤリングを大事に持ってるはず。どれかひとつでいいから、わけてもらいなさい。
苺ミルクは簡単ね。女の子の大好きなもの。食べ物じゃなくってもいいのよ。苺ミルクを表す何かなら。あなたの運命の女の子が好む「苺ミルク」を考えるの。難しいのは、甘い涙。そんな涙、どういうときに出るかって? それを教えたら、意味がないじゃない? 二つは教えてあげたんだから、あとは自分で考えなさい』
***
魔女の助言を受けて、ママにイヤリングを分けてもらった。苺もミルクもそろってる。あとは、甘い涙が必要だ。
「甘い涙ってどんなものか知ってる?」
ママは笑って、答えてくれた。
「甘い気分の時にでる涙」
「それってどういう気分?」
「ぼうやには、まだ早いと思うわ」
魔女もママも、僕を子ども扱いして教えてくれない。
「甘い涙、流してみて」
友達の女の子にお願いしたら、頬を叩かれた。どうして。
なぜか女性はみんな、「甘い涙」がなんなのか知ってるみたいだ。
「甘い涙を探してるんだ」
お姉ちゃんに、相談してみた。
「なんのために、必要なのさ」
「僕だけの女の子を作るため」
「だったら、甘い涙なんていらないじゃん。甘い涙が流せる女の子が、あなただけの女の子だもん」
いよいよもって、わからなくなってきた。
「それってどういう意味?」
「それがわかるまでは、甘い涙は手に入らない」
ママも魔女も女友達もお姉ちゃんも、僕には答えを教えてくれない。
「ヒントを教えてあげる。甘い涙は、一人じゃ流せないのよ」
甘い涙を探す僕の旅は続く。
僕だけの、運命の女の子を作るんだ。
[お題]「片方だけのイヤリング」「苺ミルク」「甘い涙」