彼だけの能力

manatsu
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「相性占いしよ!」

「占い、嫌いなんだ」

 曽根くんはそっけない。付き合って一か月目の彼氏。

「パスタ食べようよ」

「トマト、嫌いなんだ」

 曽根くんは好き嫌いがけっこう激しい。食べ物だけじゃなくて、人混みが嫌いだし、ゲームセンターとかのうるさい場所も嫌い。

「雨って嫌い」

「ぼくは好きだな」

 わたしたちは気が合わない。なんで付き合ってるんだろって思うときもある。わたしのほうから、告白したんだけどね。

「まだ?」

「もう少し」

 調べ物をしてる曽根くんの目の前の席、なんだか重たい本をたくさん積んでる彼を盗み見ながら、わたしはファッション誌を読んでいる。図書館はちょっとだけ、一緒のことができる。

「あーあ、今月の占い、最下位だー」

「そんなの当たりっこない」

「知ってる。占い、嫌いなんでしょ。これは独り言でーす」

 どうせ会話だって弾まない。思わず唇を尖らせると、彼がふっと机を挟んで乗り出してきた。

 顔に影がさす。ふにっとやわらかい感触。そうしてすっと離れていく温度。その瞬間だけ、まわりの景色も、音も、色だって全部が、消えてしまった。

「……」

「どうした?」

「嫌いだよ」

 不意打ちなんて、嫌いだよ。

 にやけちゃわないようにした口がふにゃふにゃだったから、嘘だってすぐにばれた。

 曽根くんはそっけない。わたしたちは気が合わない。

 だけど彼だけが、わたしの時を止める能力を持ってる。

 

[お題]嫌いだよ、占い、時を止める能力(ランダム三単語で一文)

@manatsu
文章の練習をしています