メタファー:リファンタジオ2

maplesk
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公開:2024/10/21

前回からの続き。ネタバレが入ってきますので注意してください。プレイ時間は80時間を超え、物語は佳境に入っております。政治が物語の中心になっている性格上、やはり現実をどれだけ踏まえているか、というのは大問題と考えます。

◎良かった点

・有力候補者(上位20人)は魔法で守られ殺害されることはない。というテロリズムを否定する縛りがあったのだが、中盤を過ぎたところで縛りが解除された点。

・貧困層を描く際にある程度のリアリティが担保されている点。家がないので仕事を探せない、仕事に繋がるスキルを持っていない、差別により働き口が見つからない、お金だけ欲しく努力を嫌う人間もごく少数いるetc.

・性別による差別がない点。恋愛要素がない部分も含めて、男性と女性に基本的に能力差がない。歌姫や聖女、警備隊長や将軍、主な兵隊が男性であるなど、ジェンダーロール的な部分は見られるが、女性だから弱い、女性と男性で職業選択に差がある感じは見られない。意図的にか、子どもが出てきても両親との関係性を出してこない(マリアetc.)。マルティラの領主ジョアンナも母として、主人公側のハイザメも父として子どもなくしており、それがエピソードの中核を為しているが、それぞれそのパートナーへの言及は少ない(ジョアンナのパートナーは異種族であり、メタファー世界では混血は忌み嫌われるという言及はある。が、子どもの父性としての存在は全く描かれない)。あえて家庭、家族というのを強く描いていない感じに好感が持てる。

◎悪かった点

・貧困層への仕事の斡旋の部分で、障害を負っている者が出てこないので「働けない」ということが想定されていない。ゲーム中に魔導器実験で心身に異常を来す者(ビンカ)も出てきているので、そういった存在を絡めることで透明化を防ぐことはできたのではないか。

・環境保護を訴える候補(ジュリアン)が現実離れした理想論を唱える泡沫候補として描かれている点。現実世界は地球温暖化を止めようと工業化以前の平均気温から1.5℃の上昇に抑えようと各国が対策をしており、現時点でも干ばつ、熱波、洪水などが多発して多くの死者が出て経済活動にも影響が出ている。2℃以上上がれば地球環境は壊滅的な打撃を受けると科学者は警鐘を鳴らしている。ここ20年が踏ん張りどころなのだが、作中では「100年後を考えて」(ジュリアン)というような長期スパンでの話にすり替えられている。それと関連して、エト・リアの8月は40℃を超える暑さなのだが、主人公はおろか街の人たちも空調もなしに普通に活動できている(暑い日は夜でも35℃を越えている)。あまりにも環境問題に無頓着すぎる。

まあ、総じて良いストーリーで差別は構造的問題であると捉えてる面もあると思うんですが、ちょいちょい日本的道徳観に根差した善性を押し付けられるのが至極残念ですね。悪かった点で上げている2点も、働かざる者食うべからずという思想や、グレタ・トゥーンベリさんやグリーンピースへの嫌悪感から来るもののように感じます。アトラスにはそういうところも超えて欲しかったのですが。

@maplesk
何者でもないおじさんの愚痴