これがしたかったんだ!私がデザイナーになった瞬間

masatosuzuki
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公開:2024/12/11

こないだ忘年会として会場の雰囲気作りとしてフライヤーや会場レイアウトに携わった。そして今日、新しい法人に参画するメンバーとキックオフに近い会話をした。

そこで今日久々に思い出した「デザイナーになった瞬間」について文章で残しておこうと思って書いている。

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希望を持ってその会社に入った。達成したいことがあるからその仕事を始めた。理想と現実はいつも乖離があり、小さな選択を繰り返す中で、時には重要な決断を迫られることもある。そんなとき、ふと思う。

「何がやりたくて今ここにいるのか。それを今もやりたいのか。今、自分は何をしたいのか。」

もしかしたら、そんなことを考える余裕すらないかもしれない。

私にもそんな時期があった。疲労と焦りで周りが見えなくなり、静かに何かに逃避したくなる時間。よく「深夜徘徊が趣味」と言うが、まさに紛れもない逃避行だった。今でも深夜の散歩とは良い関係を保ち、アイデア出しやマインドフルネスの時間として役立っている。それが自分らしさを取り戻す助けにもなっている。

当時の私はフリーランスになりたてだった。デザイナーを一度辞めて別の仕事をしていたが、再びデザインの仕事を始めようとしていた。何か明確な目標があったわけではない。ただ、年収1000万円に漠然とした憧れがあり、それを目指すことにした。

1年間、ほとんど誰とも会話をせず、外の世界と距離を取っていた。話す相手と言えばコンビニの店員くらい。もちろん彼女もいなかった。よく生きていたなと思う。今では黒歴史とも言える時期だ。

なぜデザイナーにこだわったのか、その当時はわからなかった。ただ目の前のお金を稼ぐための手段に過ぎなかった。でも、なんとなく決めた「年収1000万円」を達成しようと必死だった。

しかし、当時やっていたWebデザインだけでは年収1000万円には程遠かった。作るだけでは時間に限界があり、効率も悪い。そこで、お金を稼いでいる人たちが何をしているのか調べ、実践もした。その結果、マネジメントやコンサルに近いことを始めた。

その時、ふと気づく。「本当にこれがやりたかったのか?」

違和感があった。でも、死ぬまでの暇つぶしには良いし、続けていればお金には困らないだろうと割り切っていた。今思えば、孤独ゆえの視野の狭さだったのだと思う。

そんな時、大きな仕事でアートディレクターとしてアサインされた。母の日のデパートショーウインドウのクリエイティブだ。総括するクリエイティブディレクターが世界観を作り込んでいたため、自分の成果としてはそれほど大きなものではなかった。それでも緻密な作業が求められ、時間との戦いが1ヶ月続いた。途中で投げ出したい気持ちもあったが、フリーランスの責任感から「これを投げ出したら次はない」と思い、やり切った。

設営当日は深夜からの作業だった。内装担当者やプランナー、ファッションコーディネーターとともに流れるように仕事をこなした。時間との勝負。妥協は許されない。このプロジェクトの「顔」となるポジションだからだ。

そして朝日を拝む。夜が明ける。

仕事が無事終わり、達成感と疲労感、そして緊張の糸が切れたような感覚だった。始発は動いていたが、とても乗れる気がせず、24時間営業の喫茶店で仮眠を取った。ベッドではないので、ほとんど眠れなかったが、8時頃に店を出た。

「今日が終わったらお酒を飲み、女の子と遊び、しばらく仕事は休もう」と思っていた。その時、ふと「あの問い」が蘇った。

「何がやりたくて今ここにいるのか。それを今もやりたいのか。今何がしたいのか。」それは久々に思い出した感覚だった。

年収1000万円は達成した。時間の余裕もある。彼女はいなかったが友人はいた。それなりに幸せな日々だと思っていた。これで良いのかな、と思ったが、どこか違和感が残っていた。

「なぜデザイナーをしているのか。」

そんなことを考えながら歩いていると、仕事をしたショーウインドウの近くに来ていた。ふと立ち寄り、自分が作ったものを見に行った。我ながら良いクリエイティブができたと思い、写真を撮ろうと近づいた。

その時見た景色は、今でも忘れられない。

ショーウインドウの前で足を止める人、写真を撮る人、友達と笑いながら眺める人たち。自分が作ったものが、誰かにどのように見え、楽しさや嬉しさを与えているのか。それが何であれ、誰かの何かのきっかけになっている。その瞬間、「こういう仕事がしたかったんだ」と気づいた。これが私の「デザイナーになった瞬間」だった。

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みんなにも、そんな体験があると思う。「やりたかったことは何だったっけ?」「今の会社でいいのだろうか?」と考えることがあるだろう。答えを急ぐ必要はない。ある日突然、それを自覚する瞬間がやってくる。

私は今でもデザインの仕事をしている。

ショーウインドウの仕事はしていないが、先日、イベント会場の雰囲気作りを担当した。その時、この出来事を少し思い出した。迷っている後輩が久々に会いに来てくれたこともあり、この体験を改めて文章に残しておこうと思った。

こうした軌跡を、数年後に振り返ることができたら嬉しい。

今度、会社を作る。

名前はCASCA(カスカ)、幽から由来する言葉で、人とモノの間に潜む拡張性を表している。ユーザーインターフェース専門のスペシャルチーム、歴史上最強だったと名前が残るメイドインジャパンのチーム。

「デザイナーになった瞬間」このような体験を一緒にできるメンバーを探している。これを見た人が、来年か、5年後か、10年後かもしれないが、そんな人たちが集まる会社にしたいと思っている。

@masatosuzuki
クオリティ高くしすぎないでゆるく書いていき〜