私の大切なもの。創作……というよりかは、空想の世界。もっと言うと、リゼッタとロザリアのふたり。
昨日偶然、自殺する人の特徴を紹介する動画を目にして、その特徴のひとつに「大切なものを手放す」というものがあった。
実際に5年前、初めて精神疾患の診断を受けた年、本気で死のうとしてあらゆる私物を手放した。
だけど、創作のデータだけはどうしても消せなかった。友人との約束もあったし。これを消したら、私の中で何かが壊れると直感したから。
で、結局今日まで生きてしまっているし、創作は全然やれていない。ふたりを幸せにできていない。
逆に創作を封じざるを得ない状況の中で、生きるために仕事を得るという望まないことをしようとしている。
私の心は、早く創作を完結させて死にたい。生きることなんてもうやめたい。
私の身体は、お金のために仕事を見つけなければならないと、無理やり動き出そうとしている。
ふたりが幸せになることが私の幸せ。これを成し遂げたら、私がこの世に存在する意義はない。つまり、死ねる。死んでいい。
だから、早く創作がやりたい。
生きることを、身体も心も望んでいない。理想と現実が合致しないの、本当にしんどい。
だけど……今日も丸一日ベッドの上だった。普通の人はもう働いているのに。早く普通にならなきゃ……なんて。
本当は普通になんてなりたくない。世間や周りの価値観の押し付けはもううんざり。私は自分の命を生き切る気は一切ない。私の人生に自分の理想を押し付けないでほしい。
創作をやるためにも「意識改革が必要だ」って口ではなんとでも言えるけど、簡単にできたら医者や心理職はいらないよね。
*
空想の中で、私はよくふたりと会話する。ロザリアが私の精神症状を代弁してくれて、リゼッタが寄り添うといった感じ。
「ロザ、たまに笑ってくれるときがあるでしょ? 抱きしめてって言ってくれるときもあるでしょ? それを見るとね、少しずつよくなってきているんだって嬉しくなる。希望になるんだよ」
「もうきみに悲しんでも苦しんでもほしくない。きみのつらいことは全部俺が受け止めるから。なんでも話して。どんな闇も切り伏せて浄化させてやる。俺たちの幸せのためにも、そうしなければならない」
「『しなければならない』って、苦しくない? 自分自身を縛りつけるものにならない?」
「ならない。きみがいるから。ひとりじゃないから。俺たちはふたりでひとり。ふたりなら、欠けているものだって補い合えるし、なんでも乗り越えられるよ」
「あぁ……わたしの負け負け。これを言われると反論できない。あなたのこういうところが大好きで、大嫌い。絶対に前しか向かせてくれないんだもの。……ちょっと後ろ向きな光の精霊がいてもいいでしょ?」
「もちろん。いま、きみは孤独という影にやられた傷を癒しているときなんだよ。また輝ける。俺が輝かせる。ふたりで輝くんだ」
……こうして精神を賦活させられる台詞が書けるってことは、私はまだ希望を持っているということ?
きっと私の自己が断罪・粛正されて生まれ変わるレベルじゃないとダメだ。
壊そう、私を。完膚なきまでに叩き潰して、最後に残ったものが私の原石だ。それを磨いて売りにしよう。もうそれしかない。