ふたりを幸せにしたい

ネリネ
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私の大切なもの。創作……というよりかは、空想の世界。もっと言うと、リゼッタとロザリアのふたり。

昨日偶然、自殺する人の特徴を紹介する動画を目にして、その特徴のひとつに「大切なものを手放す」というものがあった。

実際に5年前、初めて精神疾患の診断を受けた年、本気で死のうとしてあらゆる私物を手放した。

だけど、創作のデータだけはどうしても消せなかった。友人との約束もあったし。これを消したら、私の中で何かが壊れると直感したから。

で、結局今日まで生きてしまっているし、創作は全然やれていない。ふたりを幸せにできていない。

逆に創作を封じざるを得ない状況の中で、生きるために仕事を得るという望まないことをしようとしている。

私の心は、早く創作を完結させて死にたい。生きることなんてもうやめたい。

私の身体は、お金のために仕事を見つけなければならないと、無理やり動き出そうとしている。

ふたりが幸せになることが私の幸せ。これを成し遂げたら、私がこの世に存在する意義はない。つまり、死ねる。死んでいい。

だから、早く創作がやりたい。

生きることを、身体も心も望んでいない。理想と現実が合致しないの、本当にしんどい。

だけど……今日も丸一日ベッドの上だった。普通の人はもう働いているのに。早く普通にならなきゃ……なんて。

本当は普通になんてなりたくない。世間や周りの価値観の押し付けはもううんざり。私は自分の命を生き切る気は一切ない。私の人生に自分の理想を押し付けないでほしい。

創作をやるためにも「意識改革が必要だ」って口ではなんとでも言えるけど、簡単にできたら医者や心理職はいらないよね。

空想の中で、私はよくふたりと会話する。ロザリアが私の精神症状を代弁してくれて、リゼッタが寄り添うといった感じ。

「ロザ、たまに笑ってくれるときがあるでしょ? 抱きしめてって言ってくれるときもあるでしょ? それを見るとね、少しずつよくなってきているんだって嬉しくなる。希望になるんだよ」

「もうきみに悲しんでも苦しんでもほしくない。きみのつらいことは全部俺が受け止めるから。なんでも話して。どんな闇も切り伏せて浄化させてやる。俺たちの幸せのためにも、そうしなければならない」

「『しなければならない』って、苦しくない? 自分自身を縛りつけるものにならない?」

「ならない。きみがいるから。ひとりじゃないから。俺たちはふたりでひとり。ふたりなら、欠けているものだって補い合えるし、なんでも乗り越えられるよ」

「あぁ……わたしの負け負け。これを言われると反論できない。あなたのこういうところが大好きで、大嫌い。絶対に前しか向かせてくれないんだもの。……ちょっと後ろ向きな光の精霊がいてもいいでしょ?」

「もちろん。いま、きみは孤独という影にやられた傷を癒しているときなんだよ。また輝ける。俺が輝かせる。ふたりで輝くんだ」

……こうして精神を賦活させられる台詞が書けるってことは、私はまだ希望を持っているということ?

きっと私の自己が断罪・粛正されて生まれ変わるレベルじゃないとダメだ。

壊そう、私を。完膚なきまでに叩き潰して、最後に残ったものが私の原石だ。それを磨いて売りにしよう。もうそれしかない。