こんにちは、戌井まとです。
突然ですが、皆さんは『暗闇に押しつぶされる』という経験をしたことはありますか?
小説の中なんかでそういった表現は度々見受けられるかと思うんですが、正直私は舐めていました、暗闇のポテンシャルというものを。ずっと「え?ただ暗いだけじゃん」「暗闇しかないところにずっといると気が狂うってどんな感じなの?」「瞼を閉じる暗闇と何が違うの?」と思っていました。
ですが、そんな考え方が変わったきっかけになったのが、大学時代に地下の書庫に足を踏み入れた時のことです。
チュートリアル『書庫で本を探してみよう!』みたいな時に、私以外に同輩らと教授と共に書庫に入りました。一般解放されている図書室みたいな感じではなく、地下のためか薄暗くなっていて、元々低くなっているのに天井まで届きそうな大きさの本棚がずっと奥まで並んでいました。本棚同士の間は人間1.5人ほど、本棚の足元にも本があったり、なんか謎の中2階みたいなのがあったり!? 本を読むのは苦手ですが本が好きな私は、そんな秘密基地のような空間にめちゃくちゃテンションがあがりました。
楽しくなってしまった上早く本を見つけようと思った私は、1人でズカズカと奥へと入りました。私だけ他の人と研究分野が違いましたし、私は特にゼミの中で浮いていたので(ぼっちじゃないもん…)、“1人で”本を探しに行きました。
書庫なので全体を明るくする電気なんてものはなく、一定間隔でスイッチでつける電球があるのみでした。通路から本棚の奥の方を覗くと薄暗くなっています。他にも人はいるものの、すごく雰囲気があります。
顔を覗かせる不安を押し込めながら、目当ての本を探して奥へ奥へと進んでいたのですが、ふと気づきました。
──え? 静かすぎない?
先ほど言った通り、私以外にも人はいます。教授は静かな人でしたが、一緒に来ていた同輩は仲良し女子3人組で、(言葉を選ばないで言うなら)声がデカいです。書庫に入った時も元気だな〜などと思っていた記憶はあります。
それなのに、今私のいるところにその声はほとんど聞こえないのです。
冷静に考えると、天井までの本棚、密閉した空間、そして山積みの本。音を吸収しまくっているんだろうとはわかるのですが、まるでこの薄暗い空間に私が1人でいるような気持ちになりました。引き返せば良かったのかもしれませんが、なんの意地なのか、ただ足を早めて書庫の奥へ進みました。余談ですが、戌井はお化けがめちゃくちゃ苦手です。怖いじゃん…。
目的の本を見つけましたが、内容が研究に合っていないと使えませんので、目次をぱらぱらと確認します。あとこのような機会は滅多にないのでやっぱり他の本も見ておきたいですしね。
いつまでも心に厨二病を飼っている私なので、「誰もいない暗い書庫──、その一角でページをめくる私──」に酔おうかとも多少は思ったんですが、この静けさというのは静かな暗い夜とは比にならないものでした。
なんの音も響かない空間。空気の音もなくて、ただただ、無音。それに併せてのしかかる謎の圧迫感。電気はつけていて明るいはずなのに、暗闇がにじり寄ってくるような、そんな気分になります。例えばすごく狭い空間に閉じ込められていたらこんな感じなのかな、とも思いました。私から発生する音もすぐ近くで反響しているのに、そのままどこかに呑み込まれて消えていくような感覚でした。なんだか息を吸うのもうまくできなくて、暗闇の中で息が詰まる、じわじわと恐怖に侵食されてくるような感覚。
怖ェ〜〜〜〜〜〜〜。
私はその時非常に反省しました。暗闇のことを舐めていたなと、本当に。ただただ怖かった。ちょっと泣いちゃうかと思った。本に書いてあることって本当なんだ〜と思いました。最初の人間が火を使うようになったのは夜が怖かったからなんでしょうか。
しばらく本に書いてある文字に目を滑らせていたら、気づけば教授が近くに来ていて「本あった?」と声をかけてくれました。それに対して私は「ありました!」だか、「今見てます!」だか言った気はしますが、その内容はもう覚えていません。ただ見慣れた人間が現れたことでいつもの日常とまた繋がれたような感じがしました。
その後教授の後をついて入り口に戻ると、近づくにつれて徐々に同輩らの喧騒も聞こえてきました。相変わらず騒がしいなと思いつつ、この声量が少しの本棚を超えただけで届かなくなることに驚きました。ようやくいつもの景色に戻れた感じがして、またあの本の山の奥は“向こう側”なのでは? などと思いました。
結論、人間は全てにおいて体感してみないと、それを全て書き(描き)表すことはできないんだと思いました。『宇治拾遺物語』でも自宅が燃えてるのに「火ってこんな感じで燃えるんだぁ!」みたいにやってた人もいますし(超意訳)。それからというもの、何か普段と違うことが起きた時はそれを言葉で表現しようとめちゃくちゃ考えるようになりました。採血で貧血起こしてブチ倒れた時とかもね…………。
私は他の人と比べてそういった感性というか、情緒に疎い気がします。まだまだ知らないことが世界には多すぎる。なので、今年の目標は「体験したことないものに挑戦する!」と決めています。あれ……もう今年の2ヶ月分終わろうとしてる……? そんなバカな……。
あとデッケェ〜書庫はちょっと怖いですが、本がたくさんあるブックカフェとかは一回行ってみたいです。本が好きな友人がいるので、その子を誘って。私は隣でのんびり絵でも描いてたいな。本読むと寝ちゃうので。
またなにか挑戦したことがあればここで書き散らしていきたいなと思います!
長々と読んでくださりありがとうございました。皆さんも色んなことを体験して自分の世界を彩ってくださいね。
それでは、これにて。
追伸
この内容を書こうと思って、冒頭の「突然ですが、〜」の部分をノートにメモしていたのですが、9割くらいの確率で同僚に見られた気がします。
殺して〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!
おわり