2013年11月20日の日記 - Tumblrより

篠原あいり
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このブログではやたらと死体の話を書いている気がするが、何かと死体を目にすることが多いから仕方が無い。今日はカマキリの死体を見た。オスのカマキリは交尾を終えるとメスに頭から喰われるのだと図鑑で何度も読んだが、ここまで綺麗に首を喰いちぎられて鎌をぶらりと下げて横たわっているカマキリは初めて見たのでとても興奮してしまい、まじまじと観察した。冬にカマキリを見たのもそういえば初めてだった。カマキリを見るために寒空の下、屈んでじっとしていたらすっかり体が冷えてしまった。

カマキリの死体を見つけた瞬間、三島由紀夫のことを思い出した。三島由紀夫が割腹自殺をして、仲間に介錯してもらって生首が転がっているところをスクープした雑誌だか新聞だかが衝撃だったと、以前ある先生が話してくれた。先生は、事件の内容や三島が死んでしまったことよりも、肉体を鍛えに鍛えぬいて身も心もマッチョそのものだった男が、生首だけを写真におさめられ、それで「死亡した」と報道されたことに驚いたのだそうだ。三島由紀夫のアイデンティティはあの隆々とした胸筋や上腕二頭筋にあったはずなのに、生首だけを見させられても、なかなかそれを三島由紀夫だと認識できなかったと言われて、私は納得すると同時に、少しだけ違和感をおぼえた。私が三島由紀夫の肉体のすごさについて知ったのはたった数年前のことで、それまではどんな小説を書くかということと、文庫本に載っている顔写真のイメージしかなかったので、どちらかと言うと筋肉よりも、あの太い眉毛と血走った目を見た時に「ああ、三島由紀夫だなぁ」と思う。顔を見ただけで「この人は絶対にマッチョだ」と分かるが、映画「黒蜥蜴」を観るまでは、あそこまでモリモリと筋肉を鍛えているとは思っていなかったのだ。

三島由紀夫とは違い、体だけを綺麗に残されたカマキリはカマキリ然としていて、物凄く格好良かった。やはりカマキリはスラッと長い鎌を持っているからカマキリなのだ。あの三角の顔もキュートで可愛らしいと思うが、その顔だけ転がっていてもすぐにはそれがカマキリであると認識できないだろう。

私が死んで体がバラバラになってしまった時、どの部位があればそれが私の一部だと皆に気づいてもらえるだろうか。たぶん耳だと思う。私の耳には10個以上ピアスが開いているので、初対面の人なんかは私を「ピアスの人」と呼ぶ事もある。ピアスが鈴なりになった耳が落ちていればそれで私の死、もしくは私の大怪我を誰かが悟ってくれるのだ。私の耳は人よりも小さいが、シルバーの輪っかや棒がたくさん貫かれていればきっと耳塚で他の耳と混じっても分かってもらえるだろう。

@matsugemoyasu
派手歌人 京都在住の獅子座の女 あだ名はラブリー たわむれチャーミング vir.jp/matsugemoyasu