スナップえんどうをゆがくのはなし - 2018年2月26日の日記 - Tumblrより

篠原あいり
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ヤカンで沸かしたお湯をコップに入れたらちょうどの量だったとか、帰り道に聴いていた曲が玄関につくと同時に終わるとか、そういう、意図していないなかったのに偶然ぴったり終わるものがわたしはとても好きだ。

さっきも鍋に火をかけながらスナップえんどうの筋を取っていたのだが、筋を取り終えるタイミングを見計らったかのように鍋が沸騰したので、とてもとても嬉しかった。ウキウキしながらお湯が沸いた鍋に塩を少々ふり、筋を取ったスナップえんどうを放り込み、ぐらぐらとする温度をキープして少しだけゆでる。おとなしいくすんだ色の鞘が、目が覚めるような緑色に変化したらザルにあける。ザルをゆすって水を切って、スナップえんどうをお皿に盛る。ゆでたてのスナップえんどうの、緑色のにおい。甘い春の福音だとわたしは思う。小皿にマヨネーズを絞り入れ、上から岩塩をガリガリと削る。ほかほかに暖かく、ツヤツヤのスナップえんどうでマヨネーズをすくって食べる。歯でかじるとはじける、爽やかな香気。この豆に「スナップえんどう」と名付けた人は天才だと思う。わたしは春があまり得意ではないが、春野菜というものがこの世にあるおかげで、嫌いになりきれないでいる。

@matsugemoyasu
派手歌人 京都在住の獅子座の女 あだ名はラブリー たわむれチャーミング vir.jp/matsugemoyasu