今月は大風邪をひいてしまってしばらく寝込んでいたので、ロクにNetflixやディズニープラスの作品を観ることができなかった。先月は自分としてはかなりの数を観たのでややフラストレーションが溜まる。
やっと風邪も落ち着いたので、友達から勧められた作品を観ていこうと、今日アマゾンプライムで配信されている『赤と白とロイヤルブルー』を観た。
信頼のおける友達が「観てほしい!」と熱っぽく語っていたのと、2時間ちょっとの短い作品というのでまずこれを観ることにしたのだ。以下、ネタバレにならない程度に感想を書くが、気になる人は視聴してから読んでほしい。
最初は「ああ、ケーキが……」とソワソワして気が気じゃなかったりしたが、後半に進むに連れわたしの涙は止まらなくなった。この作品を、そうだったらいいのにな、という夢物語にしてはいけない、と思った。
よく同性愛が描写されている作品に対し、「それ男同士である必要ある?」とか「女同士である意味ある?」とか言う人がいる。わたしもありふれたBL漫画についてそう思ったことが正直ある。でも、男女の恋愛作品だって、男女である必要がない作品もあると今では思う。それに、『赤と白とロイヤルブルー』はアレックスとヘンリー王子でないと成り立たない作品だった。
恋人同士で愛し合うセクシャルなシーンも多いが、男女間の恋愛を描いた作品なら出てきて当然のシーンだし、それがきちんと男性同士の恋愛についての作品のワンシーンとして打ち出されている、ただそれだけのことだ。わたしがそういったシーンが苦手かどうかは関係がない。性欲を持ち合わせた恋人同士であれば、至極当然のシーンだから。
一番好きだなと感じ、一番涙が止まらなかったのは、女性大統領であるアレックスの母が、「ゲイ、バイセクシャル、フルイド、パンセクシャル、クィア?」と質問し、アレックスが「バイセクシャルだよ」と答えたらすかさず「LGBTQのBにもちゃんと声があるわ」というシーン。息子を優しく、それでいて当然のように受け止める言葉でこんなに真摯なものがこれ以上あるだろうか。わたしはバイセクシャルを自認している女性だが、考えたこともなかったが、実はずっとそんな風に言われたかったのかもしれない、と思った。
「いざとなれば異性愛者のフリもできるんやからいいよね」と言われたことがある。
「男も女も好きなんてサブカル気取りですか?」と笑われたことがある。
「LGBTにBっていらなくね?」と聞かれたことがある。
そんなバイセクシャルにも、そんなわたしにも、ちゃんと生きる権利があるし、あげ続けている声がある。その声は悲鳴の時もある。怒号の時もある。その声をあげている存在を認識してくれている人がいるんだ、と思うと本当に嬉しかった。わたしはプレイヤーの一時停止ボタンに手を伸ばし、子供みたいに泣いた。今も泣いている。バイセクシャルが、ゲイが、レズビアンが、トランスジェンダーが、クィアが傷つくだけで終わる作品はこれ以上観たくない。当然のようにわたしたちが存在して、当然のようにあなたたちが存在して、それぞれが自分の意志を持って、自分の足で立って生きている。それだけのことをもっと祝福したい。『赤と白とロイヤルブルー』はそんな作品だった。観てよかったと心から思う。