別れを明るく歌ったプレイリスト「曇りの日なんてなかった」のはなし

篠原あいり
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公開:2024/12/6

先日、映画『ロボット・ドリームズ』を観に行った。わたしの人生のオールタイムベストに入る名曲中の名曲、Earth,Wind & FireのSeptemberがめちゃくちゃ効果的に使われていて、本当にすばらしい映画だった。映画館で立てないくらい、目玉が取れるかと思うくらい、もうむちゃくちゃに泣いた。映画館からの帰り道、Septemberを聴きながら、ふとあることに気がつく。

「わたし、別れを明るく歌った曲が好きかも……」

気がついてすぐに、数年前まで付き合っていた恋人にも同じようなことを言ったことを思い出す。最後に会った日に、わたしが化粧をしながら松原みきの「真夜中のドア」を聴いていたときのことだ。恋人が「改めてええ曲やなあ」と言うので、わたしはなんとはなしに「そうやんなあ。わたし、明るく別れを歌ってる曲、好きやなあ」とチークを塗りながら返したのだが、そのときに、ああ、わたしたちこのまま別れるかも、と思ったのだ。恋人は今まで出会った人の中で一番優しかったし、ほがらかだったし、いいやつだったし、音楽の趣味も食事の趣味も笑いの趣味も映画の趣味もアニメの趣味も似ていたけど、でも、別れるかも、と思ったのだった。実際にその数カ月後、わたしからLINEで別れを切り出した。「そんな気がしてたよ」と恋人は言って、そうよね、と思いながらLINEのアカウントをブロックした。特になにがあったわけでもないけど、なにもなかったから別れたのかもしれない。

その話を、わたしと元恋人の共通の友人にしたら「LINEのやりとりだけで別れたのもったいなくない?もう一回会って話せば?」と言われたのが今年の5月のこと。まだ涼しさの残る春の終わりに、わたしは友人に付き添ってもらって、元恋人と数年ぶりの再会を果たした。お互いに変わったところ、なんにも変わらないところがたくさん見つかって、なんで別れたんかなあ、選択をミスったかなあ、とか思いながら、いろいろなことを話した。そろそろ帰ろうかというときに、元恋人は「渡したいものがある」と言って、わたしに一枚のレコードを手渡してきた。松原みきの「真夜中のドア」が収録されたアルバムだった。

「あいりさんがこの曲好きって言うてた日に、たまたまレコードショップで売ってたの見かけたから買うてたんやけど、そっから会わずにふられたから、数年渡せずにずっと持っててん。よかったら、もらってやって」

恋人は、わたしに別れを切り出されるって、本当に思ってたのだろうか?そんな気がしてたとまで言ったのに、レコードを買って、ずっと持っていたというのか?そこまでは分からなかったし、聞けなかったけど、わたしは俯いて、ありがとう、と言うのが精一杯だった。レコード盤を胸に抱えながら電車に揺られて、家に帰った。友人は、絶対そんなつもりはなかったと思うよ、と言って笑ってわたしとは違う駅で降りた。友人と別れてから、ずっと「真夜中のドア」をAppleMusicで再生して、AirPodsで聴いた。

『ロボット・ドリームズ』を観て、Septemberを聴いて、数年前の別れのこと、5月の涼しい風とレコードのことが思い出されて仕方がなかった。別れを明るく歌ったプレイリストを作らねば、と思った。


何曲か自分で思い当たる曲をプレイリストに追加したあと、BlueskyとInstagramで「別れを明るく歌った曲」を募集した。心当たる友人にも協力してもらった。別れの対象は恋人、家族、ペット、物、季節、なんでもOKで、歌詞は別れのことを書いているのに、曲調がバラードではなく、努めて明るかったり別れの雰囲気ではないものを教えてくださいと募集したところ、なんと100曲を超えるプレイリストができあがった。

プレイリストの名前はSeptemberの歌詞の一部を和訳したもの。わたしが恋人のことを思い出すとき、たしかに大変なこともあったかもしれないけど、曇ってたときってなかったなあ、ただただ楽しかったなあと感じるので、この名前にした。

すごく思い入れのある曲を教えてくれた人、明るい別れといえばこれでしょ、という風に言ってくれた人、うんと考えて絞って絞って何曲か挙げてくれた人。みなさん、等しくありがとう!

よかったらまだまだ増やしたいので、このブログの感想レター(メッセージボックス)宛やわたしの個人のメールアドレス宛、BlueskyやInstagramのDM宛、なんでもいいので気軽に送ってほしい。


AppleMusicを契約していない方向けに、現時点(2025年5月1日更新)のプレイリストの曲一覧を記載しておく。

September / Earth,Wind & Fire

LOVE TOGETHER / NONA REEVES

銀河鉄道999 / ゴダイゴ

悲しい歌 / ピチカート・ファイヴ

真夏の夜の23時 / 和田アキ子

ブラックルーム / 黛ジュン

真夜中のドア / 松原みき

君は天然色 / 大瀧詠一

悲しみがとまらない / 杏里

BOY MEETS GIRL / TRF

Bye-Bye / ブラック・ビスケッツ

sakura / NIRGILIS

リフレインが叫んでる / 松任谷由美

プレゼント / ジッタリン・ジン

みんなのうた / サザンオールスターズ

絶交 / 堀込高樹

また逢う日まで / 尾崎紀世彦

しらけちまうぜ / 小坂忠

あの素晴らしい愛をもう一度 / 加藤和彦&北山修

さらば恋人 / 堺正章

三月のプリズム / bonobos

おなじ話 / ハンバートハンバート

セシウムと少女 / 知久寿焼

さよならリグレット / くるり

お別れの歌 / never young beach

ウエディング・ベル / Sugar

上・京・物・語 / シャ乱Q

人魚の時間 / 柳原陽一郎

パルテノン銀座通り / たま

フェアウェルパーティー / ハイ・ファイ・セット

いつでも会えるよ / ゆっきゅん

Love Is Over / chelmico

たいしたことないわ(feat.eco) / 白神真志朗

狂詩曲 / 女王蜂

お薬 / aiko

そんなに好きじゃなかった / Base Ball Bear

SHE'S GONE / 中村佳穂

Never Can Say Goodbye / Gloria Gaynor

VOYAGER 〜 日付のない墓標 / 松任谷由実

ほんじゃね / 吾妻光良&The Swinging Boppers

赤い花の満開の下 / ヤプーズ

愛してあげない / キノコホテル

盗られ系 / 倉橋ヨエコ

私はピアノ / 高田みづえ

微笑がえし / キャンディーズ

かもめ / 浅川マキ

ろくでなし / 越路吹雪

岬めぐり / 山本厚太郎&ウィークエンド

喝采 / ちあきなおみ

The Last Waltz / Engelbert Humperdinck

プライマル。/ THE YELLOW MONKEY

最後の日 / ユニコーン

悲しみよこんにちは / 斉藤由貴

さよならbyebye / 折笠愛

木綿のハンカチーフ / 太田裕美

sayonara complex / CHAI

ごめんね、テディベア / SOLEIL

Lucky Me / Tommy heavenly6

Feeling Fine / L'Arc~en~Ciel

Lolita / ドレスコーズ

エネルギヤ / the pillows

You You You / すかんち

ドーナツホール / 米津玄師

サマーヌード / 真心ブラザーズ

チェリー / スピッツ

心の旅 / チューリップ

ぼくらが旅に出る理由 / 小沢健二

愛の時差 / 崎谷健次郎

潮風にちぎれて / 松任谷由実

きみを気にしてる / 柳原陽一郎

ByeBye / フジファブリック

Girl from Mars / Ash

チェリーが3つ並ばない / 渡辺美里

September / 竹内まりや

別離 / サザンオールスターズ

1989(A Ballade of Bobby & Olivia) / KAN

さよならクレール / 中村佳穂

ハッピー・サッド / ピチカート・ファイヴ

September / Kirk Franklin

I Want You Back(Readymade 524 Mix) / Jackson5

I'm Still Standing / Elton John

たとえあなたが去って行っても / 松任谷由実

思い過ごしも恋のうち / サザンオールスターズ

That's When the Start / The Blossoms

Valerie(feat.Winehouse) / Mark Ronson

おなじ話 総天然色バージョン / ハンバートハンバート×COOL WISE MAN

SAKURAドロップス / 井上陽水

観光 / クレイジーケンバンド

ピリオドとプレリュード / クラムボン

Eletricity / 宇多田ヒカル

As It Was / Harry Styles

夢でいいから / いしだあゆみ

ありがとう / 小坂忠

Too Good to Say Goodbye / Bruno Mars

朝がまた来る / DREAMS COME TRUE

ある晴れた悲しい朝 / クレイジーケンバンド

やりっぱなしでサイナラだByeBye / Theピーズ

Under Pressure(feat.David Bowie) / Queen

Waterfalls / TLC

This Town Ain't Big Enough for the Both of Us / Sparks

N.O. / 電気グルーヴ

終りの季節 / 細野晴臣

It's Too Late / Carole King

Hits Diffarent Taylor Swift

Back to Love Estelle

Now I'm In It / HAIM

Hello / J.Cole

嫌んなった / 憂歌団

ついのすみか / 台風クラブ

通報されるくらいに / SION

鏡 / 桑田佳祐

雑感 / 柴田聡子

心晴れ晴れ / KIRINJI

デイ・ドリーム・ビリーバー / THE TIMERS

Non, je ne regrette rien / Édith Piaf

陽の当たる大通り / ピチカート・ファイヴ

GOOD BYE / YOUR SONG IS GOOD

@matsugemoyasu
派手歌人 京都在住の獅子座の女 あだ名はラブリー たわむれチャーミング vir.jp/matsugemoyasu