防災グッズのペンのはなし - 2020年4月20日の日記 - noteより

篠原あいり
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地震がまた増えてきているので防災リュックの中身を整理した。こんなタイミングで天災が起きたら泣きっ面に蜂どころの騒ぎではないので、このリュックを使う日が来ないことを祈っている。そういえば防災グッズの中にボールペンとノートが入っていたことを思い出す。これは何に使うのかと考え、わたしは「ああ、遺書を書くのね」と言ったのだが、周りの人間にはちゃめちゃに怒られたのだった。でもあながち間違いではないと思う。遺書を書かねばならない瞬間は必ずあるだろう。ないに越したことはないが。そもそもわたしは無人島にひとつだけ持って行けるとしたら何を持っていくかと聞かれて、自殺するための毒薬と答えるような女なのだ。遺書くらいかわいいもんだと思う。

防災リュックは防水加工してあるせいか独特のゴム臭さがある。今日は雨の日なので叶わないが、天気のいい日に干してその臭いを取り除きたい。このままだと狭い避難所でゴムの臭いに酔う自分の未来しか見えない。それこそ泣きっ面に蜂なのでなんとかしたい。新しい美しい化粧品を手に入れたい。香水売り場で厚かましく思うさまいろんな香りを嗅ぎたい。うんと派手な格好をして明るい歌を唄いたい。友達と踊りたい。毎晩かなしくて泣かないようになりたい。


短歌詠みまーす

このペンはインクが赤いのでちょうど死ぬ時によい感じで滲む

勘違いしてもいいのでこの旅を終わりにしたいような気がする

泣いたって何かが変わるわけじゃないなら思うさま泣かせてほしい

@matsugemoyasu
派手歌人 京都在住の獅子座の女 あだ名はラブリー たわむれチャーミング vir.jp/matsugemoyasu