前の職場の先輩にティーさんというかたがいらっしゃった。確か6、7歳年上で、男性である。仕事はえらいことできるわ、ちょっと皮肉屋だけど優しいわ、極度の偏食家だわで、端的に言えば私のアイドルでスターで心の師匠だ。
私はその会社に中途採用で入社した。そして同時に中途入社した同僚がたいそう仕事ができる人で、それもあって私は最初の一年くらい、かなりの勢いで働いた。浅はかにもクオリティの差を仕事量でカバーしようと考えていたのだと思う。そのせいか、入社一年後にとにかくたくさん働いたことに対して「ハイパフォーマンス賞」みたいなのを貰った(ちなみに件の同僚はその仕事のクオリティで文句無しの「社長賞」みたいなのを受賞していた)。授賞式のようなものも開催されたのだけれども、ずっと「いや本当に気を使わせてしまって申し訳ありません」という苦笑を噛み殺しながら過ごしていたと思う。
それからしばらくして、飲みの席でティーさんが「一年目くらいの頃、なんか『良く頑張ったで賞』みたいなの貰ってたよね」と笑って仰った。ああ、私は本当にこの人が好きだな、と改めて思った。
今は転職されて、デザイン会社の社長をされていらっしゃるそうな。