ゆっくり たくさん 話したい

松下とも子
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お勤めの日。お勤め先は一軒家なのだが、朝夕そこを掃除する時間がすごく好き。オフィスと違って自分たちの場所って感じがする。

だんだん周りのみんなと話せるようになってきた。好きだな、おもしろいな、と思えるようになってきた。話したい人と話せることができると嬉しい。人を知ることは楽しい。

連絡網でお勤め先が手話教室を主催すると流れて来ておお!と思う。私には、写真家の齋藤陽道さんともしまた会えたら手話で話したいという目標があるのだ。

齋藤さんは、私に「もう一度写真をやろう」と思わせてくれた人。「こんな人が存在するのなら、私もがんばりたい」と立ち上がることができた。昨年、熊本で写真展があり、行ったらご家族で在廊されていた。急に表現の恩人に遭遇した私は気が動転した。どんな芸能人に会っても平常心でいられる自信があるが、緊張して手が震えたのは川内倫子さんと齋藤さんだけです。あの写真を目の前の生身のこの人が撮っていると思うと不思議な気持ちになる。

齋藤 陽道「同類」|2010年度優秀賞受賞作品|キヤノン 写真新世紀 (global.canon)

キヤノン写真新世紀Webサイトより、齋藤さんの作品。本当に、「陽道」という名前のような写真だと思う。

写真展会場では手話がびゅんびゅん飛び交っていて、とてももどかしいような恥ずかしいような思いがした。だって外国に行くなら最低限の挨拶や会話は礼儀として覚えるでしょう。突然のチャンスなのに悔しかった。とは言え、齋藤さんは筆談でとても優しくユーモアを交えてコミュニケーションしてくださったのだけど。

手話教室は抽選だそうだが、目標をプレゼンしてでも参加させていただきたいなあ。いや、齋藤さんだけではない。私はできるだけ多くの人と、話したいのです。

@matsutomo
福岡で写真と文筆をやってます。 ★ほとりスタジオ www.hotori-std.com ★第54回九州芸術祭文学賞 佳作受賞kyubunkyo.jp/archives/1158 ©2024松下とも子