中洲大洋映画劇場が今日でその歴史に幕を下ろした。
大好きだったこの空間。ふかふかのソファ、足が伸ばせる前座席との間隔、ゆとりのある通路。シネコンは詰め詰めで閉塞感があり、息苦しくなってしまう。パニック発作のケがある私は躊躇する。中洲大洋はリラックスして鑑賞できる数少ない映画館のひとつだった。
これは昨夏、パルプ・フィクションを観に行ったとき。なんといってもあのソファの深紅の色と、一番星みたいな照明がクール。映画の良さも倍増だ。
今月お別れに行こうと「哀れなるものたち」を予約していたが、胃腸炎で行けなかったことが悔やまれる。最後に観たのはミッシェルガンエレファントの解散ライブの映画。
とても心が動かされたが、劇場効果もあったに違いない。ある種のブリティッシュ・ロック(俺もやりてえ、カッコいい!と思わせる)にあの薄暗い不埒なハコはぴったりだった。瓶ビール(下のカフェで買える。ここがまた良くて、ピーナツとかつけてくれる。バイトしたかった。)をラッパ飲みしながらライブ気分で楽しんだ。2回観た。
そう、不埒。不埒ってなんだっけと今調べてみました。
『道理にはずれていて,非難されるべきこと。よろしくないこと。また,そのさま。ふとどき。』
あら~最高。不埒なデートにもぴったりな場だわね。街はどんどん白くぴかぴかな建物ばかりになってつまらない。光は陰があるから引き立つ。光は自分を透過していくが(だから常に新しい光がいる)、不埒は過ぎ去ると時とともに飴色に煮詰まる。マッチングアプリとかつまんないよね、目的も分かり切っていて、画面ピカピカで。
こんな意見はおばさんのたわごとって分かってる。知っている人や好きだった場所が消えていくのは自分が立っているステージの照明がひとつひとつ消えていくみたいでさびしい。私はそれにまだ慣れない。