すてきなあたしの夢

松下とも子
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朝からリハビリ。開始から2か月が経過し、ずいぶん痛みが取れてきた。痛みのあまり眠れず、いざとなったら手術してもらえる病院を探してはるばる城南区まで来たのだ。ここまで回復させてもらってありがたい。周りを見渡すと同世代の女性はだいたい同じように肩、七十代以降はひざって感じ。ふむふむ。

強い雨の中家に戻り、校正作業にとりかかる。途中、熊本の友達から嬉しい連絡をもらう。AJICOのメンバーにサインをもらったというのだ。彼は服屋をやっていて、ライブの後、店で余韻にひたっていたら打ち上げ後のメンバーが通りかかったらしい。

羨ましいよりも、神様、やるじゃん!と思った。誇張ではなく年間362日ぐらい遅くまで店を開けている働き者の彼が、この20年で店を早じまいしたのは前回のAJICO鳥栖ライブの時だけという筋金入りファンなのだ。同じ目に遭うなら私でなく彼にしてほしい。

店はほぼ自宅状態なので数百枚のCDや本が置いてあり、メンバーのソロワークにもそれぞれサインを頂いたそう。中でも、彼がファッションの道に入る原点となった北村道子女史スタイリングのUAのグラビアに入ったサインを見たときは「やったあ~!」って声が出ちゃった。

なんか、思うけど、表現から大切なものをもらって、それを大切にして生きてきたら絶対その人に会えるんだよね。彼の場合大切にしているのは「オルタナティブであること」じゃないかな。サインとかただの物質だから、そこじゃなくて、会えたことが嬉しいよね。

若い頃は未来も世界も広すぎて途方にくれていたけど、なんとかかんとかヨロヨロしながらでもやってきたら仲間もできるし、ご褒美みたいなすてきなこともあるよ、と過去の自分へもエールを送りたい(私も齋藤さんに会えたしね!)。

雨があがって光が差してきた。さてさて私も校正がんばりますか。帰り道にアゾルのドーナツも買ってきた。止まらなくなるやつなのでもう少し取っておく。私の夢もあなたの夢も、すてきな場所にいつか届きますように。

@matsutomo
福岡で写真と文筆をやってます。 ★ほとりスタジオ www.hotori-std.com ★第54回九州芸術祭文学賞 佳作受賞kyubunkyo.jp/archives/1158 ©2024松下とも子