今年で93歳になる母はわがままで自分の思うようにことが運ばないと酷く怒り周囲に当たり散らすような人で、私も姉も子供の頃から母の顔色をうかがうように生きてきた。物理的に距離をおいたほうがいいとケアマネさんから助言を受けて母には早くから介護施設に入居してもらった。幸い母の年金と遺族年金で入居費用は賄えている。医療費など足りない分はうちが負担している。入居してから十年以上経つのだが、入居当初は毎日のように電話で施設への不満をあびせられ、骨折やがんで入院手術したときは姉と二人交代でつききりの世話をしてきた。通院の付き添いもずっと姉と交代だったのだが、足腰が弱くなり一人だと転倒などが不安なのでここ数年は二人で付き添っている。病院は待ち時間が長くて毎回いつまで待たせるのかもうしんどいと待っている間ずっと文句を聞かされていた。のだが、
去年のいつ頃からだろう。母は病的な認知症はないのだが認知の程度が急激に落ちた時があった。心配して検査もしてもらったのだが結果は年相応。自然なものなので見守ってあげてくださいと医師から言われた。そしてそれまで険しい表情が多かったのがすっかり穏やかになった。施設の方からも要求は相変わらず多いけれど職員に当たるようなことはなくなったしなにかやってあげれば毎回感謝されるようになったと言われる。我々にもことあるごとにありがとうを言う。以前にはなかったことで驚いているのだが施設長さんは生活に満足されているのだと思いますとおっしゃるのでたぶんそうなのだろう。
子供の頃は、いや大人になってからも気分次第で理不尽に叱られるのがあたりまえだったので不思議な気持ちだ。自己判断ができなくなっているので施設の職員さんたちと以前よりも密に連絡をとりあって買い物などをしないといけなくはなっているけれど、あちらはプロなので対応はおまかせしても大丈夫そうだし、このままずっと本人が気持ちよく過ごせるのであればとてもありがたいことだと思う。
母方の家系は長寿なのだ。祖母は早くに亡くなったが祖母の妹たちはみな長生きだった。105歳ぐらいまで生きた方もいる。母の妹もまだ元気に過ごしているらしいし母の従兄妹たちもみな元気だ。これからはこちらの体力との勝負かもしれないな。がんばろっと。