そして地震に気がつかなかった、と言うと、多くの人に「えっ!?」と驚かれる。正確には地面がぐらっとしたのはわかっていたけれど、揺れているのは地面ではなく自分だと思っていた。
イタリア語の学校に向かう途中で、すんごいめまいするけど、やっぱ疲れてるんだな……と考えながら裏道を歩いていたら、一人のおじさんが道の真ん中で仁王立ちして空を見上げているので、どうしたんですか?と聞いたのだ。
地震だよ。と、おじさんは言った。彼が指差す方向を見ると、電線がぐわんぐわん揺れていた。
この時点でも、大変な揺れだったことにまったく気づいていなくて、学校に到着したら先生も生徒も事務の人も大騒ぎになっており、むしろその時起きた余震の方が怖かった。あちこちで小さく悲鳴が上がる中、ナポリ出身者は子供の時に経験した地震よりも揺れてないから大丈夫、とよゆうの構えであった。それは1980年のイルピニア地震のことだと思う。