チャオルアとパクチーとわたし

mayim
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一昨日、頻繁にはチェックしなくなったFacebookをたまたま見ていて、思わず「ええーっ!?!?」と声を上げてしまった。

独身時代からよく利用していたベトナム料理店が1月31日をもって閉店したというお知らせだった。

つい半月ほど前に友達と行ったばかりなのに……

その時は月末に閉店するという雰囲気なんて全く感じられず、店内もスタッフさんも至っていつも通りだった。

「この店のトイレは便座が冷たいから気をつけて!覚悟してトイレに行って!」と友達と笑い話をし、うだうだと2時間も過ごしてしまった。

まさかあれが最後になるなんて。

これからもずっとそこにあるものだと思っていたのに、予期せぬ別れにただ呆然としてしまった。

私はその店のブンボーフエが大好きだった。こちらに遊びに来た県外の友人にも布教し、その友人はまんまとブンボーフエファンになった。

水筒に汁を入れて持って帰りたいよね、といつも話していた。

その友人が来る度に2人ともブンボーフエを注文し、毎回写真を撮った。

これが私のラストブンボーフエ。

プリッとした丸い麺にピリ辛のスープ。レモングラスの爽やかな香りが後を引く。この謎のハムが地味に好きだった。

他のベトナム料理店でもブンボーフエを見つけると注文するのだが、このマイベストブンボーフエに優るものにはいまだに出会えていない。

パクチーを好きになれたのもその店のおかげなのだ。

その店はフリーパクチーシステムがあり、好きなだけ(常識の範囲で)追いパクチーができる。

元々、パクチーは特段苦手ではなかったのだが、さほど食べ慣れていなかったので最初の頃は噛む度に(ワァッ!)と思っていた。

店内のポスターに「パクチーが苦手でもエイヤッと食べてるうちに好きになっちゃった人も!」というようなことが書かれていたので、半信半疑でなるべく食べるようにしていた。

だってタダなんだもの。

そういうところで私の「ちょっとでも得したい」というさもしい精神が出てくる。

そんなこんなで、気づけばまんまとパクチー好きになっていたのだ。

その店には一人で行くことも多かったのだが、最後に行ったのが、ブンボーフエファンの友人と、久しぶりに会う友人と、珍しく4人も集まれた時だったのが良かったと思う。

寂しいことに変わりは無いが、実は姉妹店がその店の徒歩圏内にあり、美味しいブンボーフエはまだ食べることが出来るのだ。それで気持ち的に救われている部分はかなり大きい。

でも私のファーストブンボーフエの店はもう無い。

いつから通っていたのかも、もう思い出せない。

その土地を離れてからも2~3ヶ月に一度は必ず利用していて、本当に大好きだった。

外観は目立つ黄色で、ベトナムらしいキッチュな雰囲気のカラフルな店内。ちなみにベトナムには行ったことはない。

鮮やかなあれこれが目に入るのに何となく落ち着く場所だった。

欠けた食器もなんとなく味があって気にならなかった。

ベトナム料理とパクチーの美味しさを教えてくれた店。

ありがとう。

そして長い間おつかれさまでした。

私はいつか例の友人とベトナムを訪れることを夢見ている。

きっと現地のブンボーフエより、チャオルアのブンボーフエが好きだと思うのだろうけど。

@mayim
水瓶座。文字校正かじり中。とあるメディアの編集部に潜む。