十二月十三日(日)

mayo_fujita
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公開:2025/12/13

 文学フリマで購入した本を読み進める。夏しい子さんの『性被害にあいました 毒親育ちとデブをこじらせて』と夫である九里方兼人さんとの共著『ゆめよい文藝vol.4』を読んだ。前者はタイトルからして重い内容だとわかる。他の作者なら読まなかったと思うが、夏さんは重いことを恨みとは無縁の明るい筆致で書ける方だと知っているので購入してみた。お母さんの毒親ぶりは相当なものだが、社会的にはそれなりに常識人として生きていける人だったのではないだろうか。つまり、同じ毒親でも社会人としてそもそも失格というわけではないタイプ。私の母と同じ。私の方は、母について客観的に書ける気がしないが。毒親育ちゆえ自己肯定感が低く、そのため性被害に遭いやすかったというのも何となくわかる。私の場合は、痴漢の話などして母に怒られるのが嫌だった。怒られないにしても、派手に騒がれたり周囲の人たちに相談しまくったりで何らいいことにはならないとわかっていた。もっとも、夏さんや私の世代は性被害をオープンにしにくかったと思う。痴漢などは犯罪とさえ見なされなかった。そんな告発でその人の人生をダメにするのかと警察や鉄道会社の人に言われる時代だ。毒親育ちでなくても、耐えるしかなかった人は多かったに違いない。

 SNS等で見ての勝手な印象だが、夏さんは自己顕示欲が薄く、見返りなく他人をサポートできる人ではないかと思う。私にも割とそんなところがあるのでわかる。これまた勝手な私見だが、毒親育ちを何とか切り抜けることができれば、そういう性質になるのかもしれない。この年になって、無駄に私、私という気持ちが強かったり、見返りを求めたり(または見返りがない場合は何もしない)するのははたで見ていても痛々しいし、本人も辛いと思う。もっとも、毒親育ちゆえに承認欲求が強く計算高い性格になる人もいそうなので、単に個人の素質によるのかもしれない。

 ご夫婦共著の文芸誌も面白かった。九条さんは一家言ある方で、おっしゃる通りと思うこともあれば、私には関係が薄く特に意見がない問題もあったが、ご夫婦共に主義主張をはっきり出されているのがいい。過去作もまた読んでみたい。

@mayo_fujita
読書日記を書いています。小説メインで色々読みます。古い小説と海外文学、ZINEや同人誌など。