十二月七日(日)

mayo_fujita
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公開:2025/12/7

 安岡章太郎の初期短編集『ガラスの靴 悪い仲間』(講談社文芸文庫)を読み終えた。第一作である「ガラスの靴」は別にして最初の方は「村上春樹の二番煎じだなあ」(先に書かれているが、今ではそう思ってしまう)と思って読んでいたが、途中から面白くなってきた。村上春樹が褒めるのもわかる。語り口がいい。軽やかで笑いもあって。「愛玩」「蛾」「悪い仲間」あたりが特に好きだ。この先に戦争が待っているのだという気持ち。ところがいざ徴兵されてみると結核が見つかり除隊の上寝たきりになる。そうした経歴が未成熟なモラトリアムな気分、没入しきれない気分を生んでいるのだろう。とはいえ、同じ切り口の作品ばかりだったので最後の方はまた少し飽きた。この前読んだ長編小説『幕が下りてから』は十年以上のちに書かれた作品だけど、同じテイストだったしな。そう言いながら『果てもない道中記』『私の濹東綺譚』『鏡川』を読んでみたいと思うのだから、すごい作家だとは思う。今のところ、もっと読みたい昭和の作家は丸谷才一、中上健次、津島佑子、大江健三郎(もうけっこう読んでいるが)。安部公房と三島由紀夫も読みたい。ーーと書くと、世評の高いものを素直に気に入っている感じだけど、その通りなのだから仕方ない。

#純文学100冊マラソン 1/100

@mayo_fujita
読書日記を書いています。小説メインで色々読みます。古い小説と海外文学、ZINEや同人誌など。