区役所に復職証明書を提出した。
子ども窓口は2階の端に設置されており、わたしは左側の最前列で待つように案内される。目の前には若い女性とその母親らしき人が座っていて、何やら話し込んでいたので、自然とその相談内容に耳をそばだてた。
「保育園のことなんですけど」と40代半ばくらいの女性が言った。隣には若いママさんがいて、抱っこ紐でふにゃふにゃの乳幼児を抱えていた。見たところたぶん生後3〜4ヶ月くらいだろう。
「わたし、この子の親なんですけど。この子が未成年やから、赤ちゃんを保育園に入れるのにわたしの○○っていう書類が必要って言われたんです。これで足りてるか見てもらえますか?」
そういうこともあるのか、と思う。
令和5年の出生件数は72万件ほどである。6年前のデータと同じ割合だとすれば、未成年の母親というのは1%にも満たないレアケースである。目の前にいるママさんがそこまで幼い見た目ではなく、一見何ら問題もなさそうなところが妙にリアルだった。
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ここまで極端なケースじゃなくても、子育てをしていると色んなタイプの女性に遭遇する。学生時代は接点のなかったようなタイプや、だいぶ年上の女性や、びっくりするようなキャリアをお持ちの人とか。もちろんバックグラウンドに関係なく話の合う合わないはあるけれども、出産してからというもの、どのような人とでもそれとなく話を合わせて情報共有するというスキルが上達したように思う。
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自分の受付番号が呼ばれると、復職証明書はたったの2分ほどで受理された。待った時間の約10分の1ほどだ。席をたつとき、隣ではまださっきの家族が保育園の書類について和やかに会話を続けていた。
すれ違いざまにちらりと赤子を確認する。赤ちゃんはエルゴベビーの抱っこひもの中で、退屈そうに天井の蛍光灯を睨んでいた。自分の娘も低月齢のときは外出をあまり喜ばず、周囲を睨みつけてばかりだったことを思い出す。
いつかどこかで会ったら、その時は色々とお話しましょう、と念じながらその場を離れる。お節介というわけじゃなくて、われわれ母親というのはそういうものなのだ。どんな年代でも、どんな信条でも、どんな肌の色でも、そっと同志と手を繋ぎあう準備というものが、母親には備わっているのだと思う。