夫が死んでしまったらどうしよう、と考えるときがある。
夫はいちばんの親友であり、恋人であり、自分自身のようでもある。その半身を失うのは想像もできないくらい怖い。
それ以前に、そもそも物理面において夫なしで生きていくのは相当に難しい気がする。独身時代は少ないお給料でワンルームに細々と暮らしていて、奨学金を2種類返済しなければならないのもあったし、貯金のたぐいは殆どできなかった。たった3千円の電気代すら払えずに、電気が止まってしまったこともある。「あと2日でお給料が入るので、それまで待ってもらえませんか」と関電にお願いしたその日、何度スイッチを押しても部屋に電気がつかなかったことを思い出す。
正直、そのままキリギリスのように死んでいくのだろう思っていた。そのことを受け入れていたのだ。今は夫のおかげで綺麗な家で過ごせているけれど、また何もかも失ってまた空っぽのワンルームで暮らせと言われたら、そのことは何とか耐えられるような気もするのだ。
ただ、夫を失うということは、もっと底知れない「精神的な意味あい」の消失であるように感じる。きっとその時が来たら、わたしのすべてから意味が失われてしまうのだろう。
夫のことが大切で、大好きで、特別だ。でもそれとは少し違う、自分自身に対する尊厳みたいな感情が夫に対してずっとある。日々を暮らすなかで夫にその感情を感じるとき、ああ、今日も電気が点いたのだ、とほっとする。